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19.成田空港の北ウィング

説明

1994年はぼくにとって鉄道旅行の始まりの年でした。ホリデーパスが発売になったのが大きく、これを使って関東近郊のJRや私鉄にたくさん乗っておりました。

さて、ここで1つ問題があります。それは成田空港です。JRの成田から成田空港まではスーパーホリデーパスで乗りました。このとき成田空港の改札は通らず、成田から乗ってきた電車が成田空港に着いたら、電車を降りずに成田まで引き返してきたのです。

しかし京成電鉄の方は電車を降りないわけにはいきません。京成には乗り放題のきっぷなんてないから、帰りのきっぷを買うには改札を出なければなりません。

そして、なんでも成田空港ではJRでも京成でも駅の改札で、駅に来た「目的」を質問されるといった話だからです。そしてパスポート、パスポートがない人でも運転免許証を提示させられるそうです。

運転免許証の提示は郵便局で書留を受け取るのといっしょだと思えばたいしたことはないのですが、問題は「目的」です。なにしろぼくは海外に行く用事なんてないのです。目的がないと京成電鉄に乗れないということです。

しかし朗報(?)がありました。なんと会社の後輩が海外に何ヶ月か出張に行くことになったそうです。

よし、後輩にかこつけて成田空港に行こう!と思いました。つまり見送りに行くわけです。

なんでも駅に来た「目的」を説明する際には、もし見送りだと言うと、何時のどこ行きかときかれるそうなので、後輩に何時のどこ行きかききました。そうしたら「JALの2便」だと教えてもらいました。ロサンゼルス行きの出発18:00だそうです。

よし、これで成田空港の駅に降りられるぞ!と思いました。京成でそのまま往復するより、ホリデーパスで行った方が安いので行きはホリデーパスで、帰りに京成で京成成田まで行ってJRに乗り換えようかと思いました。

無事後輩が日本を離れる日がやってきたので、ぼくはホリデーパスを買って成田空港行きの電車に乗ったのです。

成田線その1

経緯

成田空港行きの電車は錦糸町手前でトンネルを出た。そして錦糸町に停車する。

そして発車。ぐんぐんスピードを上げる。千葉までは市街地だ。川を渡って進んでいく。スピードを落として千葉に到着。

きょうは関東の私鉄乗りつぶしの一環として、京成成田から成田空港まで乗ることにする。

なんでも成田空港では駅を出るときに駅に来た「目的」をきかれるそうなので、おいそれと行くわけにはいかないようだ。

でもきょうは会社の後輩がロサンゼルスに行く日だ。だから後輩から出発便をきいて、駅で目的をきかれたら後輩が乗る航空機の便名を言おうと思っている。いわば後輩を「ダシ」にして成田空港に行くわけだ。

なんでも後輩が乗るのはJALだそうだ。JALだと第二ターミナルということになる。ということは空港第2ビル駅で降りればいいわけだ。まずは空港第2ビル駅に向かおう。

千葉〜空港第2ビル

電車が千葉を発車するとたちまち森がちらほらと左右に広がる景色になる。先月もホリデーパスで通った道だ。ホリデーパスのおかげで今年はたくさんJRに乗れる。ずっと発売されるといいなあ。

やや小さめの市街地、佐倉を過ぎ、また畑の景色を見て進むと佐倉よりは大きいが千葉よりは小さな市街地の成田に到着。120円おおまわり旅行で何度も乗り換えた駅だ。かなりの客が降りるが、大きな荷物を持った客は残る。

あとは3ヶ月前にも通った道だ。電車が発車するとしばらく市街地を進むが、やがて市街地のはずれで我孫子や銚子に向かうレールと分岐して右に曲がっていく。

こんな道だったかなあと思いながら進むがこんな場所だったのだろう。なにしろ電車の旅は見慣れない景色との出会いが楽しいものだ。季節が違うと景色が違う。そんな違う景色がいつも待っているから楽しいのだ。

電車は森を左右に見ながら進み、地下におりていった。そして4月以来となる空港第2ビルに到着。4月は終点まで行って降りずに帰ってきたが、きょうはここで電車を降りる。さあ、エスカレーターを上がって改札だ。

免許証

まずはホリデーパスを取り出す。確かここって免許証を見せなければならないんじゃなかったっけ。ぼくはホリデーパスと、念のため免許証を手に持って改札に見せた。すると、

「ここではきっぷだけ見せてください。免許証はそちらで見せてください。」

と駅員に言われた。ともかくホリデーパスは使えたわけだ。そしてしばらく通路を進む。まだ改札の外っていう感じがしない。

やがて通路に窓口があり、係員がいた。駅員とは違う制服を着ている。こちらの係員はJR東日本の駅員ではないようだ。この人たちに免許証を見せればいいのかな?

えーと、ここでは空港に来た「目的」をきかれるんだったな、後輩に教えてもらったロサンゼルス行きの便名を思い出す。えーと、「JALの2便」だったっけ。

JALの2便、JALの2便・・・とつぶやきながら、係員に免許証を見せてみる。何も言われず、あっけなく通れてしまった。あれ?「空港に来た目的」はきかれないのかな?

どうもふにおちないがこれでいいらしい。とりあえず空港に入れた。さあ、いろいろまわってみようと思い、ぼくはさらに通路を進んだ。

補足

なお、この日から15年くらい後で青春18きっぷでJRの成田空港駅をおとずれる機会があった。そのときになってはじめて駅に来た「目的」をきかれた。その時は「見学」とこたえた。それでOKだった。

すなわち、ターミナルが違うだけなのに、第一ターミナルだと目的をきかれて、第二ターミナルだときかれないということだ。なぜなのかわからない。

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京成電鉄

食堂

JRの電車を空港第2ビルで降りて、まずホリデーパスを見せ、10メートルくらい進んだところで免許証を見せて通路を進んだ。

なにしろぼくは海外に行ったことがない。それどころか自分の金で航空機に乗ったこともない。会社持ちの出張だけ、わずか2往復だ。だから空港なんてものにてんで縁がない。

ともかく暗い通路を進んでいく。羽田とか福岡とか、鉄道と直結している空港は便利だが、駅からロビーまではそれなりに距離がある。ここもけっこう通路を進んだ。

暗い通路を進むと、いきなり開けた場所に出た。

そこはすごい空間だった。

ふきぬけの場所に、まるで晴海の国際見本市会場や幕張メッセみたいに店がたくさんある。

そしてどれも食堂なのだ。ぜいたくな空間である。

ぼくは当時、羽田と松山と福岡しか空港を知らなかった。

どこも空港の空間の大半の場所は、出発ロビーや到着ロビーに割り当てられていた。食堂は、空港のかたすみにひっそりと固まってあるだけだったのだ。

それが成田空港は、食堂だけでこんなにスペースがある、とてもぜいたくだなあと思った。

食事

ふきぬけの2Fから階段をおりて、食堂のある場所に行く。

そこは大規模スーパーの最上階にあるような食堂が並んでいる場所だった。

実のところ、以前高速道路のサービスエリアの食堂があまりにもまずくて高かったこともあって、「競争原理が働かない場所の食堂は高くてまずい」ものだと思っている。

だから空港の食堂もそれほど便利じゃないんじゃないかと思ったが、これだけ並んでいると安いかどうかはともかく意外とうまそうだなあと思った。まあ、食堂に入るのはきょうはやめにして、後輩を探しに行こう。

無料バス

案内に沿って通路を進むと、ようやく出発ロビーにやってきた。うん、羽田にもあるような出発ロビーだ。もちろんJALのロビーもある。

目的地ごとに分かれているようなので「北米方面」の場所に行ってみるが、さすがに出発18時なので、後輩の姿は見あたらない。国際線っていろいろめんどうらしいので時間に余裕をもって来るものだと思ってはいたが、さすがに早すぎたようだ。後輩が来るまでどうしようか。

とりあえず建物の外に出てみることにした。そしていろいろ歩く。

すると「無料バス」と書いてあるバス停の前に出た。案内を見ると、なんでもここ第二ターミナルから第一ターミナルへの無料バスだということ。

これを見て、ハッと気がついた。ここは第二ターミナルだから、空港第2ビルから京成成田まで電車に乗っても空港第2ビルから成田空港までを乗り残してしまう。

でもバスで第一ターミナルに行き、成田空港から京成成田まで乗れば乗り残しがない。

後輩と会うには京成成田からまた空港第2ビルまで乗る必要があるが、どうせホリデーパスがあるし、たぶん京成成田からJRの成田までは歩ける距離だろうから歩いて、JRでここまで戻ってくればいいだろう。

よし、この無料バスに乗ろうと思い、行列の後ろに並んだ。しばらく待つ。待っている人はスーツ姿の男性だけだ。10人もいない。そんなにこのバスに乗る人もいないだろう。

バスがやってきた。乗ってみる。あいている席にすわると発車。

バス

バスは近代的な建物の間をぐにゃぐにゃと進むが、意外と時間はかからずに目的地の第一ターミナルに到着した。

北ウィング

バスを降りると近くの建物を見てみた。

よく見ると「南ウィング」と書いてある。南ウィング?ということは近くに「北ウィング」があるのかな?

近くの別の建物のところに行ってみた。

おお!「北ウィング」だ!

航空機

「北ウィング」と言えば中森明菜の歌だ。「北ウィング」が成田空港の歌ということは今はじめて知ったような気がする。あれは昭和の歌だから、あの時点では成田空港の第二ターミナルがなくて第一ターミナルだけだったんだなあなどと思う。

荒井由美の中央フリーウェイも、実際に中央自動車道に乗ってみて実感しないとよくわからなかったが、これからも歌の場所に行ってみて実感することがあるような気がする。

さてどうしようか。第一ターミナルは第二ターミナルより建物が小さいからあまり建物の中をめぐってもおもしろくなさそうだ。

どうせここに来た目的は京成電鉄に乗ることなのだから、すぐに乗った方が良さそうだ。そんなわけで駅を見つけることにした。さあ、駅はもちろん地下だろう。どこかに案内はないかな。

なんとか案内が見つかった。羽田空港もモノレールの駅は地下で、地上から相当おりないとたどり着けないからここもそうだろう。さあ、おりていこう。

成田空港〜京成成田

地下に行き、あちこち歩いて、なんとか京成電鉄の駅を見つけた。さあ、京成なのできっぷを買わなければならない。

自動券売機を見つけ、京成成田までの運賃を調べてお金を入れてきっぷを買う。きょうも無事きっぷを買うことができた。

自動改札を通り、ホームに行く。スカイライナーは特急料金がかかるから乗らないようにしなければならない。スカイライナーでない電車がやってくるのを待つ。

なんとかやってきた。ここが終点なのでたいていすわれる。それほど客も多くない。やっぱり成田空港は最初のうちはバスしかなかったから、電車の客もそれほど多くないのだろう。席にすわる。

そして発車。地下をちょっとだけ進んで空港第2ビルに到着。多少客が乗ってまた発車。

電車は地上に出た。地図を見たところではJRと京成では通る場所が違うらしいが、どう見てもそれほど差があるようには感じられない。

左右に森が広がる景色である。そのうち市街地が近づいてきた。多少JRの方より建物が多いような気がする。そしてスピードを落として京成成田に到着。電車を降りる。降りる人より乗る人の方が多い。改札に行って駅の外に出る。

京成成田〜JR成田

さあ、ここからJRの成田駅まで歩かなければならない。どう行けばいいのだろう?

ぼくはここ、京成の成田駅なら去年も来たことがある。あの時は東成田まで行って、バスで京成成田まで帰ってきた。650円くらいかかって、ずいぶん電車より高いんだなあと思ったものだった。

でもJRの成田は乗り換えたことはあるが改札を通ったことがない。地図では北の方に行けばいいようだがどのくらい時間がかかるのだろうか?まずは行ってみよう。

まっずぐ北に行く道はなく、東西に道がある。東に進む車が多いようだし、東に行ってみよう。それにしても、歩道が全然ない。本当に成田はちゃんとした都市なのだろうか?

そんなに大きな店があるような感じもしない。小さな店が固まっている感じだ。道は北の方に続いてはいるものの、むしろ建物の数が減っているような感じがする。

そんな道を、不安になりながら進んだ。そしてようやく駅らしい建物が見えてきた。

あったあった。JRの成田駅だ。多少離れているが、ものすごく町はずれというわけでもなさそうだ。ともかくここから電車でまた空港第2ビル駅に戻ろうと思い、ホリデーパスを取り出した。

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成田線その2

成田〜空港第2ビル

京成成田駅から歩いて、なんとかJRの成田駅にやってきた。ホリデーパスを取り出して進む。まずは階段を上がる必要があるようだ。

階段を上がると改札があった。ホリデーパスを見せるとあたりまえのように改札を通れる。一年中発売されるようになって3ヶ月、成田まで行けるのはありがたいなあ。

成田空港に行く電車は数が少ないが、なんとかそれほど待たずに乗れるようだ。階段をおりてホームに行き、電車を待つ。やってきた。ドアが開くと降りる客が多い。大きな荷物を持った航空機の客も多いみたいだが、これだけ降りる客が多いので空席はあってすわれた。そして発車。

あたりまえだが数時間前に通ったのと同じ景色である。レールは我孫子や銚子に向かうレールと分岐して右に曲がっていく。そして森を左右に見ながら進み、やがて地下におりていく。

電車はスピードを落とし、無事空港第2ビルに到着した。電車を降りる。

さあ、あとは数時間前と全く同じ手順だ。ホリデーパスをJRの駅員に見せると、今度は免許証を係員に見せる。特に何の目的かは係員はきいてこない。

見送り

通路を進み、JALの出発便の待合室に来た。なにしろ目的地はロサンゼルスなのだし、北米方面の待合室にいるとは思うけどなあと思いながら彼らを探す。こっちかな。

そしてようやくアメリカに出張に行く後輩と後輩の上司を見つけた。

今回ぼくは彼らを成田空港に行くためのダシに使ってしまい、とても心苦しかったが彼らには関係ないことだ。とりあえず、お気をつけてと言っておいた。

最近は新入社員の数が少なくなってきた。そしてなんだかぼくらの年代よりも優秀な人が入社しているような気がする。そんなことを考えた。

別に彼らが搭乗口に行くのを待つこともないだろうと思い、そのまま彼らとは別れて地下の空港第2ビル駅に戻ることにした。

帰宅

JRの方の駅も京成と同じで、出るときは免許証を見せる必要があるのに入るときはノーチェックだ。しかも今度はホリデーパスだ。ホリデーパスを見せてあたりまえのように改札を通る。

そして降りたのと同じホームに行く。しばらく待つと東京方面の電車がやってくる。ドアが開いたので乗る。どちらかと言うと第一ターミナルより第二ターミナルの方が客が多いようだ。無事すわれた。そして発車。

電車が発車すると地上に出る。森が見える場所だ。きょうは三度もここを通っていることになる。ホリデーパスは便利なきっぷだからこれからも何度も使うような気がする。

森の景色をぬけ、電車は左に曲がって右から来る我孫子や銚子から来たレールと合流する。そして成田着。客が多少乗る。

あとは何度も通った景色だ。千葉までは田んぼや森が近くにある場所を通る。千葉をぬけるとずっと都会だ。市川を過ぎると川を渡る。

そして電車は錦糸町に停車し、たくさん乗り降りがあった後でまた発車して、品川手前までの長いトンネルに入っていく。

きょうはホリデーパスを使って成田に行き、成田空港に向かう京成線に乗るという1日仕事をした。

今年4月から一年中使えるようになったホリデーパスだ。先月は小湊鉄道・いすみ鐵道に乗ったし、そして今日の京成電鉄。まだまだホリデーパスを使う機会もあるだろう。

いい1日だったなあと思いながら、寮に帰っていった。

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