青森駅から西に歩いたところにあるヤマザキデイリーストアを出て、さらに西に向かった。
ヤマザキのあかりが見えなくなり、ほとんど真っ暗な道を進んでいく。これから乗るフェリーは1時過ぎで、まだ12時にもなっていないのでなんとかなりそうだ。
そのうち前方右手にオレンジのあかりが見えてきた。おそらく港だろう。
近づいてみるとどうやらフェリーターミナルのようだ。車がたくさん停車していてにぎやかそうだ。建物に入ってみよう。
入口の近くに食堂があって、営業しているようだ。ここは24時間船が出ているので食堂も夜中に営業しているのだ。まずは窓口に行こう。
窓口は「出航の1時間前に受け付け」という看板が出ていた。とりあえず食堂に戻ろう。
ラーメンを食べて窓口の前で待ち、乗船券を買う。そのうち乗船である。
10年前に乗った青函連絡船は大混雑だったが、このフェリーはそこそこな数の客しか乗っていない。
やはり駅から遠いからなのだろう。運賃自体はJRよりずっと安いのだが。
2等船室に横になると出航だ。時間は青函連絡船とそんなに変わらず、約4時間だ。前の日が急行八甲田の座席だったので、横になるとたちまち眠ってしまった。
そして放送で起こされ、函館港に到着である。船をおりる。
さて今は朝5時、これから乗る予定の青森の大間港行きの出航は9時である。
同じ港から出るので港で休んでもいいのだが、ここは1つやっておきたいことがある。
なんでもこの港からJR江差線の七重浜(ななえはま)駅が歩いて行ける距離にあるそうだのだ。
だから道順を確認してみようと思い、歩き出した。
7月の北海道の朝は早く、もうすっかり明るくなっている。自分の信じる方向に歩く。
そのうち江差線のレールが見えてきた。貨物列車も通るのでピッカピカのレールである。
しかし駅があるって雰囲気じゃないなあ。
ぼくはとりあえず道を探して西の方に歩いてみた。かなり歩いた。
するとようやく駅舎が見えてきた。だいぶ回り道したなあ。
無事七重浜駅到着。南にまっすぐ道が通じているので、この道を進めばもっと短い距離で港まで行けるだろうなあと思い、また港に歩いて戻ることにした。
JR江差線の七重浜駅からまっすぐ南に通じている道を進んだ。
するとつきあたりにコンビニがあった。買い物していこう。
買い物をすると東に進む。しばらく進むと右に分かれ道があったので進んでみると函館港に戻ってきた。よし、これであとで七重浜に来ることがあったら迷わずに港に行けるだろうなあと思った。
しばらく休んで、さて大間港まで乗船券を買おうと窓口に行ったら、大間港に限り自動券売機で買うらしい。よくわからないがそういうルールなのだろう。
自動券売機で買って、さて出航時刻が近づいたので建物を出て、船を探す。いろいろな人にきいて、なんとか見つかる。そして乗船券を見せて乗船。
青森からの船に続いてまた2等船室に行く。さっきよりさらにお客は少ない。出航だ。
さっきは暗かったし眠っていたので、今度は窓の外をながめることにした。函館山が見える。10年前に行った山だ。それもすぐに小さくなっていく。北海道の陸地も、青森の陸地も遠い場所である。
しかし何もすることがない。やっぱり眠ろうと思った。なにしろ今夜も急行八甲田に乗るのだ。
そんなわけで横になって眠ると大間港に着いたようだ。
無事バスに間に合うかなあと思いながら下船し、バス停を探す。
港のそばの道にちゃんとバス停があった。バスの時刻も時刻表通りのようである。でもバスを待つ客はぼくだけのようだ。みんな車を使うのだろう。しばらくバスを待つことにした。
大間港前のバス停で待っているとバスがやってきた。ここより若干南から来るバスらしく、バスの中には2人ほど客がいた。でも乗るのはぼくだけである。バスは進んでいく。
バスは北に進み、大間崎に着いた。岬にはバイクや車で来たらしい観光客が若干いる。夏休みの日曜日なので客がいるのだろう。
でもぼくはもう去年宗谷岬に行っちゃったから、いまさら本州最北端に行ってもしょうがないなあと思う。バスは進んでいく。
バスは病院にも寄る。大間の集落の足にもなっているようだ。路線バスってけっこう病院が重要な拠点のようだ。ぼくの実家近くのバスも病院が拠点だったりする。さらにバスは進み、集落を離れていく。
海沿いの道に出る。ついさっきまでフェリーに乗っているのに、やっぱり海はいいなあと思う。フェリーから見る海とバスから見る海に違いはないのに、なんとなく違うものを見るように感じる。相変わらず2〜3人しかいないバスは進んでいく。
途中、海沿いの道をはずれて内陸方向に進んだ。集落に寄っていくようだ。
路線バスって客の便宜を図るものだから、お客の多い場所に寄っていくのである。たぶん海沿いの道はバイパスだから、旧道を寄っていくのだろう。
ぼくの実家近くのさっきとは別のバスも、バイパスは通らず旧道を通っているので似たようなものだろう。集落で何人か乗ったり降りたりして、また海沿いの道に戻り、きれいな海を見ながらバスは進んでいく。
そして1時間以上かかってようやくバスは終点、大畑に到着した。もう12時である。
下北行きの下北交通のディーゼル車が出るまで1時間以上あるので、ぼくはこのあたりに食堂がないか探すことにした。
大間港から乗ってきたバスを降りる。ちょうどお昼の12時だ。しかし下北行きの列車は13時発である。どこか食堂でも探そう。
駅の近くに食堂があった。入ってみる。おじさんおばさんが4、5人ほどいた。しかしどうも食堂を営業しているという感じではない。茶飲み友達がおしゃべりしているといった感じである。
きょうはこの食堂は本来は営業していないらしいのだが、カレーライスなら食べられると言われたので注文することにした。今日は大畑駅近辺では営業している食堂がないので「救済措置」なのかもしれない。
カレーライスがでてきた。なんだか食堂と言うよりも家庭のカレーライスのようだ。もちろんぼくはおなかがすいているので2も3もなく食べる。今日もカレーはうまい。のど自慢を見ながら食べ終わる。
カレーライスのほかにもいろいろ野菜をごちそうになる。そしてカレーライスの値段だけ払って食堂を出た。港町の食堂はいごこちがよくていいなあ。
食堂を出て大畑駅に向かう。もうすぐ下北駅行きの発車時刻だ。
きっぷを買ってディーゼル車に乗る。数時間ぶりの列車なのにお客は少ない。発車だ。
海沿いの街を出たディーゼル車は、山の近くを進んでいく。とてもいい景色である。お客があまり乗って来ないまま時間が過ぎる。
そしてようやく終点、大湊線の下北駅に到着した。とりあえず予定通り進めたので、なんとかここから三厩(みんまや)まで行って帰って上野行き急行八甲田に乗れそうだ。
ぼくは大湊線の列車が来るのをホームで待つことにした。
大畑(おおはた)から乗ってきたディーゼル車を下北(しもきた)で降りた。乗換駅なのにけっこうこじんましとしたホームの駅である。下北交通の客はみんな大湊線に乗るようだ。
大湊(おおみなと)からディーゼル車がやってきた。うわあ、いっぱいだ。しかたない。立って行こう。
このディーゼル車は野辺地(のへじ)まで大湊線を進んだ後、青森まで直通する列車である。大湊線は列車の数が少ないのでかなり混雑するのだろう。まあ客が少ないよりいいのかもしれない。
大湊線は去年の6月にも乗ったのでそれほど見るべきものはないが、沿線の植物は日本のどことも違っていて、植物を見ているだけで飽きさせない路線である。
沿線のほとんどの区間からむつ湾が見えるのでとても気持ちのいい路線ではあったのだが、いかんせん立ったままなのでたいして景色も見られない。
それでも時刻表通りには進んでいるようで、野辺地が近づき、海から離れてようやく野辺地に着いた。ここでほとんどの客は降りてなんとかすわれた。
しばらくするとディーゼル車は青森に向かって進んでいった。きのう客車で進んだ道をまた進むわけである。
さっき東から見たむつ湾を南から見る。このあたりはそれほど変わった植物があるわけではないが、海と山の見えるいい景色である。そして約15時間ぶりに青森の市街地に入っていき、終点青森駅に到着した。
無事定刻に着いたのでなんとか津軽線の蟹田(かにた)行きに乗れるようだ。ぼくは階段を上がって蟹田行きのホームをめざした。
大湊(おおみなと)線の下北(しもきた)から乗ってきたディーゼル車を青森駅で降りて、階段を上がっておりて津軽線の蟹田(かにた)行きの出るホームにやってきた。
きのう青森から弘前(ひろさき)へ、そして川部(かわべ)から青森まで乗った電車と同じ電車だった。ボタンを押して開け、乗ってボタンを押して閉める。
やはり夏はちゃんと冷房が効いている列車が良い。きのう三沢から青森まで乗った客車は冷房がなかったので窓を開けて風を入れて過ごしたが、やはり新型の冷房の効いている電車やディーゼル車はいいなあと思った。オールロングシートだが、ぼくはロングシートの方が好きだということもある。
午後の電車は日曜日だからかけっこう客が多い。とは言っても全員すわれるくらいである。しばらくして電車は発車した。いったん南に進み、大きく右に曲がっていく。
大きな市街地からあっと言う間に人家の少ない場所に出る。この路線は津軽海峡線の一部でもあるが、ぼくは夜行のはまなすでしか乗ったことがないので昼間の景色を見るのはこれが初めてである。
と、駅でもない場所で停車した。アナウンスによるとすれちがいの待ち合わせだと言う。そのうち貨物列車がすれちがっていった。そしてその後でこちらの電車も発車する。
この路線は貨物列車とか多い区間だけど単線だから、こういうすれちがいが良くあるのだろう。長野県の篠ノ井(しののい)線も特急が走っていて単線だから、すれちがい停車が多かったなあと思い出す。
しばらく進んだ駅で、今度は電車とすれちがいだ。そして海が見えてくる。なんにしても海が見えるのはいい。急行はまなすに乗った時もこのあたりでは遠く海に浮かぶ船の明かりが見えたことを思い出す。よく見れば今も遠くに船が見えるようだ。空も青くいい天気である。
電車の客はそれほど降りることも、新たに客が乗ってくることもなく、定刻通りに電車は進み、ようやく終点蟹田に到着だ。けっこう大きそうな駅である。そう言えば急行はまなすに乗った時もここで運転停車したし、JRにとって重要な拠点なのだろう。
とは言っても今はすぐに三厩(みんまや)行きディーゼル車に乗り換えなければならない。帰りに蟹田で乗り換え時間があるので駅を出るのはその時にしようと思い、ぼくは三厩行きの出るホームを探すことにした。
青森から乗ってきた電車を蟹田(かにた)で降りて、階段を上がっておりてディーゼル車の前に来た。大湊(おおみなと)線のディーゼル車ほど新しくなく、五能線並みの古さのディーゼル車だった。乗ろう。
さすがに1日数往復しか走っていないので日曜でもそれなりに客がいる。そして発車だ。
しばらくは北海道に行く路線と同じレールを走る。中小国(なかおぐに)に停車してさらに進む。
しばらくすると右に真新しいレールが分岐していくのが見えた。こちらはまっすぐ進む。とたんにディーゼル車はガタガタし始めた。
おそらく今まで通ってきたレールは貨物列車がひっきりなしに通る路線だからレール整備をきちんとしているが、こちらは貨物は通らないからそれなりにしか整備ができないのだろう。
ディーゼル車は畑や森林が広がる中、ガタガタしたレールを進んでいく。このあたりは青森から蟹田までと違って海は見えない。
いくつか集落を抜け、客が降りていく。
そしてようやく終点、三厩(みんまや)に到着である。これでぼくが乗っていないJR東日本の路線は飯山線の越後川口〜飯山間のみになったのである。
ホーム1本しかない三厩の駅でディーゼル車を降りて、青森・十和田ミニ周遊券のB券を見せていったん改札を通った。折り返しの蟹田行きの発車までしばらく時間があるので、まずは駅舎を出よう。
なんともこじんまりした駅前であった。人家はそれなりにあるが、お店といったものは見あたらない。食堂があるだけである。あとはバス停がある。おそらく青函トンネル記念館に行くバスだろう。駅舎に戻ろう。
見回すと一冊のノートがあった。どうやら三厩に来た人が記念に書き込むノートらしい。
でもあまり時間がないのでほかの人の書き込みに目を通すひまはない。とりあえず「あしたJR東日本完乗予定」と書いておいた。
そしてまたミニ周遊券を見せて改札を通り、さっきまで乗っていたディーゼル車に戻る。お客はだいぶ少なくなっていた。しばらく待つと運転手がやってきて発車する。
今日はまっすぐ青森に行って上野行き急行八甲田に乗る必要があるのでどこにも寄れないが、蟹田で若干時間があるので駅の外に出てみようと思った。
集落を出て畑と森の風景になり、津軽海峡線が合流して中小国に停まる。そして多少日が暮れてきたころ、ディーゼル車は終着、蟹田に到着した。階段をのぼっておりて、ミニ周遊券を見せて改札を出た。とりあえず駅前を歩いてみよう。ここは海が近い場所のようだ。
三厩(みんまや)から乗ってきたディーゼル車を蟹田(かにた)で降りて、青森・十和田ミニ周遊券のB券を見せて改札を通った。
蟹田は三厩と比べると若干大きな家並みの集落で、近くに海も見えた。
なんでも鉄道の本によれば駅前に「海峡ラーメン」というラーメン屋があるらしい。
確かにラーメン屋はあったが、閉まっていた。さすがに日曜の夕方は営業していないのだろう。どうやら今日の夕食はカロリーメイトになりそうである。
まあいいかとあたりを散歩する。いい海である。しばらく散歩して蟹田駅に戻る。
ミニ周遊券を見せて改札を通り、電車に乗る。さすがに夕方暗くなり始めた時刻の青森行きなので客は少ない。ロングシートにすわると発車である。
ぼんやりとした海が見える。海はどんな時刻に見てもいいものである。
数時間前に青森から蟹田まで乗った時と同じように、貨物列車とすれ違っていく。
時刻表どおりでも青森で急行八甲田との接続の待ち合わせがそんなに時間がないので、遅れたりしないか不安だったが、まあなんとかなるかと思った。そして行きにも停車した信号場で長いこと停車する。電車とすれ違っていく。そして発車。
電車は人家が多少多い場所に入っていき、左に大きくカーブした。たちまち市街地になり、大きな建物の間のレールを進み、電車は終点青森に到着した。
どうやら無事に急行八甲田に乗れるようなので、電車を降りて八甲田の出るホームをめざした。