目が覚めた。さあ、きょうはウィークエンドフリーきっぷを使って東北方面に行こう。
本当は、先に山形新幹線に乗りたかったのだが、いざアパートもより駅から電車に乗ったらどうも予定していたつばさに間に合いそうもない。しかたない。先に仙台に行って岩切(いわきり)〜利府(りふ)の路線に乗ろう。
3ヶ月ぶりのやまびこに乗る。始発でないやまびこには自由席に空席がある。雪のない景色である。関東平野をぬけ、東北に入っていく。
アパートでゆっくり寝たので眠っても仙台までに起きられると思い、眠る。
目が覚めた。よかった。乗り過ごしていない。
やまびこはスピードを落として左にカーブし、仙台の市街地が見えてきた。そして3ヶ月ぶりに仙台駅に降りる。
きょうは仙台で降りているひまはない。エスカレーターをおりてウィークエンドフリーきっぷを中間改札に見せて通り、東北本線のホームに向かった。
仙台で東北新幹線から東北本線に乗り換える。今日は利府(りふ)まで往復すればいいので岩切(いわきり)に行く電車に乗ればいい。なんとかホームを見つけて電車に乗る。さすがに日曜お昼なので客が多い。そのまま発車。
仙台から北に進む場所はけっこう景色がいい。右から左へ仙山線の高架が上を横切っていく。そして陸橋も上を越えていく。そして右へと曲がり、仙台の市街地を進んでいく。だんだん家並みが少なくなっていく。
そんなふうにして東仙台を過ぎ、岩切に着いた。ここで降りる。利府行きの電車を探そう。
見つけた。あまり車両数の多くない電車だ。入ってみるとバスによくあるような、整理券を出す機械がある。
うーん、去年乗った水郡線みたいなJRのディーゼル路線とか、きのう乗った蒲原(かんばら)鉄道とかの中小私鉄に整理券を出す機械があるのはわかるが、仙台近郊の電車にも整理券の機械ってあるもんなんだなあと思う。
なぜか乗ってきたおばさんに質問された。
「ねえ、この機械から整理券出てこないんだけど、どうするの?」
ぼくはこう言った。
「この機械は途中の新利府駅専用の機械です。岩切や利府では整理券を取る必要はありません。」
「ああ、そうなの。どうもありがとね。」
今まで一度も乗ったことがないのに、口からでまかせを言ってしまった。まあ、たぶん間違っていないだろう。きのう乗った蒲原鉄道の電車でも、整理券は途中の駅専用だったし。
そして満席にならないまま電車は発車していく。近くにある東北新幹線の高架はずっと見えている。家並みは少ないもののずっととぎれないまま新利府を過ぎ、終点利府に到着した。相変わらず新幹線の高架が見える。住宅地のようである。遠くの方に畑も見える。
いったんウィークエンドフリーきっぷを見せて駅を出て、まわりの景色を見た後で電車に戻る。また発車し、同じ景色を見ながら岩切に戻ってきた。
さあ、岩切〜利府の次は阿武隈急行だ。阿武隈急行へは東北本線で槻木(つきのき)まで行って乗り換えれば良い。幸い今度来る仙台方向の電車は槻木まで行く電車だ。
電車がやってきた。乗ってみるとさっきより客が多くすわれなかった。さすがに昼間の仙台行きは混雑している。電車は発車する。
仙台駅に近づき、市街地に入り、線路は左にカーブして仙山線をくぐって仙台駅に到着する。
ドアが開き、たくさんの人たちが電車を降りるが、かなり時間がかかる。
さっき仙台から岩切まで乗った電車はけっこうドアの多い電車だったが、今度の電車はドアが少なく、しかもドアが狭い電車だった。たぶんかなり昔から使われている電車なのだろう。
ようやく発車である。仙台から南はもう数十回通った景色である。東北新幹線に沿って左にカーブし、右手にテレビ塔が3本見えて、そのうち広瀬川を越えると長町である。
あとは右手にずっと山が見えたまま岩沼まで進み、岩沼を過ぎると左手に常磐線のレールが遠ざかっていく。
そして左手にも山が見えてきたところで目的地、槻木に到着である。ここで電車を降りる。ぼくと同じように阿武隈急行に乗り換えるらしい人たちも数人電車を降りた。
さあ、阿武隈急行ってどんな電車なのだろう、阿武隈急行っていうくらいだから阿武隈川は見えるのかな、と思いながら、福島行きの電車を探した。
岩切(いわきり)から乗ってきた電車を槻木(つきのき)で降り、阿武隈急行の電車を探した。
となりのホームに電車はあった。とりあえずきっぷを買うことにしよう。
いったんウィークエンドフリーきっぷを見せて改札を通り、自動券売機で阿武隈急行の福島行きのきっぷを買った。そして阿武隈急行の電車に乗る。
しばらくすると電車は発車した。
電車は内陸に向けて進んでいく。峠を越える白石経由の東北本線と違い、この路線はずっと阿武隈川がそばにある。
槻木までいっしょだった若い人たちは、角田(かくだ)などでほとんど降りてしまい、車内はがらんとしてしまった。そして福島との県境にさしかかる。
阿武隈急行の県境はずっと阿武隈川のそばである。ただし、川ばかりで人家が全くない場所である。
河原とか全くない、急ながけに囲まれた場所を進んでいくのである。こんな地形だから阿武隈急行のレールもトンネルが多く、レールを通す場所に苦労しているようである。確かにこんな場所では、明治とか大正とかの時代ではレールを通すのは無理だろう。
そんながけに囲まれた場所を通り、福島県側に入っていく。福島駅と直結した路線だからか、けっこう乗ってくる客がいる。
阿武隈川から離れても、緑の多い景色の良い路線である。そのまま進んでいく。
福島駅が近づいた。白石から来る路線は、福島の盆地を見下ろしながらくだっていく路線であるが、阿武隈急行はいきなり盆地に入っていくのである。福島の北にある信夫(しのぶ)山が目の前に見える。そして山につきささる東北新幹線の下を通り、山の右に進んでいく。
右手に山からおりてきた東北本線が見える。そしてそのまま合流。電車は市街地に入っていき、そのまま終点、福島駅に到着した。
電車を降りる。進んでいくと改札があった。改札前にはJRのきっぷを売っている場所があった。福島で降りる客はそのまま駅を出ることができ、JRに乗る客にとっては中間改札としてJR福島駅に進むことができる場所である。ぼくは阿武隈急行のきっぷを渡し、ウィークエンドフリーきっぷを見せてJR福島駅に入った。
進んで階段をのぼり、通路を進むと新幹線との中間改札があった。阿武隈急行が時間通りに福島駅に着いたので、予定通り山形鉄道に乗りに行くため山形新幹線に乗ることにしよう。ぼくはふたたびウィークエンドフリーきっぷを見せて中間改札を通った。
槻木(つきのき)から乗ってきた阿武隈急行(あぶくまきゅうこう)の電車を福島で降り、阿武隈急行のきっぷを渡してウィークエンドフリーきっぷを見せて、改札を2回通ってなんとか山形新幹線のホームまでやってきた。
自由席は一番前の車両であることがわかっているので前に進む。しばらく待つとつばさがやってきた。
つばさは停車すると、ドアとホームの間に板が伸びる。そしてドアが開いて客がつばさを降り、伸びた板の上を渡ってホームに降りるのだ。福島でつばさに乗るのは初めてなので、板が伸びるのを外から見るのは初めてである。なかなかおもしろいと思っているうちに乗らなければならない。
乗ってはみたものの、自由席はいっぱいだ。これじゃしょうがない。
これから乗るのは山形鉄道なので、赤湯まで行って乗ろうかとも思っていたが、時刻表によればどうやら米沢で降りて米坂線で今泉まで行っても乗れるようなので、つばさは赤湯でなく米沢で降りることにしようと思った。
しばらくはやまびことの切り離し作業が続く。毎日毎日車両の切り離し・連結作業を行う人たちはたいへんだ。そしてようやくつばさが発車する。
ぼくはデッキで、ドアの窓の外を見ていた。米沢までノンストップなのでこれでいいだろう。
山形新幹線としては去年2月以来の景色だが、在来線として去年9月に見た景色である。そんな福島山形の県境の山々を見ながらつばさは進んでいく。でもところどころ踏切を渡る。妙なものである。
やはりつばさは速く、それほど時間もかからずに目的地、米沢に到着した。ここから米坂線である。米坂線は南のはずれの遠いホームから出るはずだから急いで行こうと思い、走ってディーゼル車に向かった。
福島から乗ってきた山形新幹線つばさを米沢で降り、ホームを南に進んだ。米坂線ホームは南に進んだところにあるはずだ。
走って無事たどりついた。ディーゼル車は日曜の午後なのに席は満員である。しばらくして発車した。
しばらくはまちなかを線路は進む。米沢の次の駅で、また高校生がたくさん乗ってきた。ありゃ、こんなところでも乗ってくるのか。
あとで米沢の地図を見たら、米沢はけっこう広く、奥羽本線は市街地の東のはずれを通っていて、米坂線は市街地の南側を通っていることがわかった。だから高校によっては米沢のとなりの駅がもより駅なわけだ。なかなか通学がたいへんそうだ。
満員のまま米坂線は市街地を離れていく。それからは駅ごとに学生が降りていく。畑が広がるようになる。
あれ、犬だ。ディーゼル車からつながれている犬が見える。
列車から犬が見えるなんて、去年11月に吾妻線の大前で降りて、折り返しの高崎行きに乗る前に見た駅前の犬以来だなあと思った。この犬は毎日毎日米坂線の列車を見ているわけだ。うるさいものが動いているなあと思っているのかな。
だんだん太陽が西に傾いてきた。かなりの学生が降りたが、降りきらないまま目的地、今泉に到着した。ここで降りる。学生たちも半分以上降りるようだ。
さあ、山形鉄道の荒砥(あらと)行きに乗ろう。どうやら学生たちのかなりの人数が同じ列車に乗るようだ。
米沢から乗ってきた米坂線のディーゼル車を今泉駅で、おおぜいの学生といっしょに降りた。かなりの学生がぼくも乗る山形鉄道のディーゼル車に乗り換えるようだ。しかも今泉駅は中間改札なしに米坂線から山形鉄道に乗り換えが可能なのである。
米坂線のディーゼル車とは違った塗装のディーゼル車に乗る。整理券を取る方式なので取っておこう。学生が多いので立って進むことになる。ディーゼル車は発車する。
もう夕方である。このあたりは広い盆地なので、高い山々はそれなりに遠くに見える。そんな景色もすぐに暗くなり、見えなくなっていく。学生たちも駅ごとに降りていき、やがてすわれるようになった。
そしてすっかり暗くなり、学生も3分の1くらいになったころ、ディーゼル車は終点、荒砥(あらと)に到着した。ディーゼル車を降り、改札で今泉から荒砥の運賃を払って通った。
まずはトイレに行っておくことにする。それからきっぷ売り場に行き、赤湯までのきっぷを買う。そしてきっぷを見せて改札を通り、ディーゼル車に戻った。お客はぼくを含めて数人しかいない。そのうち発車する。
景色も見えないままディーゼル車は進んでいく。今泉を過ぎても全然乗ってこない。そのまま終点赤湯に着いた。ここで降りる。赤湯も山形鉄道と奥羽本線の中間改札はなく、改札は共通だった。きっぷを渡して降りる。
さて、最終の東京行きつばさまで1時間以上時間がある。その間に夕食を食べる時間がありそうだ。駅を出て食堂を探してみよう。
赤湯駅から東に進んでみた。寿司屋があった。しかし寿司はぼくはあまり好きではないし、回転寿司じゃなさそうだからとても高そうだ。別の店を見つけよう。なおも東に進む。
別の店があった。また寿司屋だ。いったい赤湯にはいくつ寿司屋があるんだ?
こんなに寿司屋があっても、共倒れとかしないんだろうか?寿司屋以外の店があることを信じてなおも進む。
あったあった。ラーメン屋だ。帰りのつばさの発車時刻までまだ時間があり、ラーメンは食べられそうだ。注文する。出てきた。今日もうまいラーメンだ。
今日もうまいラーメンが食べられたことに感謝しながら店を出た。さあ、赤湯駅に戻ろう。
赤湯駅から東の方に歩いたところにあるラーメン屋でラーメンを食べて、赤湯駅に戻ってきた。
赤湯駅は閑散としていた。今度来る東京行きつばさは最終のつばさなので、もう客もいないわけである。
ウィークエンドフリーきっぷを見せて改札を通る。山形新幹線のホームは在来線と共通である。自由席は一番うしろの車両だからうしろに向かう。
つばさがやってきた。ドアが開いたので乗る。ウィークエンドフリーきっぷが使えるので、それなりに客はいる。でもすわれた。発車。
もう暗いので景色は見えないが、米沢を過ぎ、たぶん峠を越えているんだろうなあと思った。そして福島に到着。
なんとこのつばさは福島から大宮までノンストップだと言う。意外とつばさの停車駅って少ないんだなあ。
つばさは福島駅を発車して、スピードを上げて東京へと向かっていった。考えてみれば、おとといの夜突然きっぷを買って新潟へ、そして仙台へと鉄道の旅行に出てしまったわけである。
今後とも、いきなり鉄道旅行に出かけることがありそうだが、きのうきょうで東京に近い場所はすべて乗ってしまい、あと残っているのは福島交通とくりはら田園鉄道、あとは青森に近いところくらいである。
北ばかりでなく西の方もけっこう乗っていない鉄道があるし、ゆっくり乗っていこうと思っているうちにつばさは東京へと向かっていった。あしたからまた仕事だ。