時刻表を見ていたら、高知県に「ごめん・なはり線」という路線が新しく開業することがわかった。
ぜひとも行ってみたいものだと思った。
ついでにまだ乗っていない、神戸市営地下鉄の海岸線や、摩耶(まや)ケーブルにも乗ってみたいと思った。
どうせなら青春18きっぷを使った旅行にしたいが、高知から帰る時だけは青春18きっぷは使わず、一度乗ってみたい「サンライズ瀬戸」と呼ばれる寝台特急に乗ってみたいと思った。
すなわち、こういう計画である。
「ムーンライトながら」で神戸へ→地下鉄とケーブルカーに乗る。余った時間は大阪をめぐる→「ムーンライト高知」で御免(ごめん)へ→「ごめん・なはり線」に乗る→琴平に行き、観光→坂出に行き、「サンライズ・瀬戸」で東京に帰る
さて、計画したはいいが、ムーンライトながらの指定席はとても取りにくいという話である。
しかしなんと言うことか、乗りたい日の1ヶ月前に寝坊して、会社に間に合わなくなってしまった。
どうせならと休暇を取って、駅にムーンライトながらの指定席券を買いに行った。無事買えた。
その後、ムーンライト高知の指定席券・サンライズ瀬戸の寝台券も買えた。坂出から東京までの乗車券も買い、7月1日になってから青春18きっぷも買った。
こうして出発の日を迎え、ぼくは東京駅へと向かったのである。
東京駅にやってきた。今は午後10時20分だ。まだ夕食は食べていない。
ぼくは閉店まぎわのスーパーで買った値引きのうな丼と、その他の値引きの食べ物を手に、地下の銀の鈴へと向かった。
こんな夜更けでもいすで休んでいるお客がたくさんいる。
見たところ、ぼくと同様にムーンライトながらを待つという客でもなさそうだ。どんな客だろう。
どんな客かはおいといて、ぼくは空いている席にすわり、うな丼を広げて食べ始めた。ここはそういう用途にも使える場所である。
食べ終わると10時50分になった。まだムーンライトながらが出る時刻までは50分あるが、とりあえず散歩でもしてみようと思い、歩き出した。
とぼとぼ歩いて階段を昇り、銀の鈴より1フロア上のフロアに来た。同じようにムーンライトながらに乗ると思われる人たちが、おもいおもいに階段にすわっている。
なぜか東北・上越新幹線の改札の前にやってきた。あれ?ここの位置冷房の風が当たって気持ちいいなあ。
改札の前、ちょっと離れたところには冷房の風が当たる場所があったのである。
そこで風に当たりながら、ぼ〜っと他の客を見てすごす。
ほとんどの客は家路に向かう人たちばかりだ。ムーンライトながら以外の夜行は既に出てしまっている。
ぼくは11時15分まで冷房の下で過ごすとホームに出ることにした。
そこには湘南ライナーが停車していた。お客がぞろぞろと入っていく。
湘南ライナーは電車に乗る時に定期券とライナー券のチェックを行うのだ。なぜかものものしい警備員みたいな人が数人、駅員に混じってじっと立っていた。なんなのだろう?
やがて発車時刻の11時半が近づいた。かけこんで来る人がいる。扉の前でポケットに手を突っ込んで、券を探しているみたいだ。だいじょうぶかな?
無事その客は券を見つけて入れたようだ。そしてライナーが発車していく。
警備員たちは仕事が終わったので階段をおりていった。
それが済むといよいよムーンライトながらの入線だ。電車がやってくる。そして停車した。ドアが開く。
全車指定席なので誰も急ぐことなく、みな電車に乗っていく。そして指定された席にすわった。
そのうち車内アナウンスが始まった。
いつものことだが、この電車は全車指定席です、本日指定席は売り切れています、としつこいくらいにアナウンスする。まあいつものことだろう。
ぼくはスーパーで買ったキャラメルを食べながら、とらのあなで買った「バーチャルネットアイドル・ちゆ12歳」を、わざとブックカバーをはずし、表紙を他のお客に見せながら読んだ。
今日は山手線が遅れておりますので接続を取りますと言って、電車はちょっとだけ遅れて発車するそうだ。そう言えば新幹線改札の前で待っていた時も、新幹線が2分遅れで発車しますとか言っていたような気がする。まあいいかとちゆの本を読み続けた。
さて、発車時刻になったようだ。ムーンライトながらは静かに東京駅ホームを発車していった。
ぼくにとって約2年ぶりのムーンライトながらの旅行が始まったのである。
ムーンライトながらは東京駅を発車した。もう通勤客もまばらな駅のホームを見ながら進んでいく。
ながらは品川駅に着いた。臨時大垣行きの出るホームはどうなっているかなあと思ったが、上りの品川止まりの電車があってホームの様子は見えないようだ。
それでもなんとか窓ごしに臨時の出るホームを見た。やっぱり満席のようだ。それほど立っている客もいないようである。
ながらは品川を発車していく。車掌がやってきたので横浜までのきっぷと指定席券と青春18きっぷを見せ、青春18きっぷにスタンプを押してもらう。そしてさらに電車は進む。
2つ前の席の客はどうやら指定席券を持っていないようだ。辻堂とか言っている。
横浜で降りて乗り換えてくださいと車掌に言われてしまった。なかなか毎晩毎晩困った客が多いものである。
そのまま電車は進み、多摩川を渡り、進んで進んで横浜に着いた。ここでとなりにお客が乗ってくる。
となりの客はでかい荷物をズルズルと持ってきていた。
すでにぼくの席の上の網棚はぼくの荷物があったので向かいの席の上にどっこいしょと載せた。キャンプで使うようなシートを丸めて持ってきている。たいへんだ。
横浜を出る。もう見飽きた風景なので、相変わらずぼくはちゆ12歳の本を見ていた。
大船に着いた。横浜に続いてお客が乗ってくる。となりの客が荷物を置いた網棚の下にも大きな荷物を持った客がやってきた。網棚を見て困っているようだ。
ぼくが「あいているところに載せたらどうですか」と言うと、離れたところに荷物を置いているようだった。
国府津を過ぎた。するすると空いている席に近づいて乗ってくるお客がいる。これでほとんどこの車両は空席がなくなった。いつものことである。
小田原に着いた。お客がドドドッと乗ってくるが、空いている席がないことを知るとデッキに帰っていく。今日はまだ帰るスペースがある日らしい。
小田原を過ぎると左の窓を見てみた。熱海までは暗い海がたまに見えるのだ。
でも月がないのでそれほどのものでもない。まあいいか、最終日にサンライズ瀬戸に乗っている時にでも見ようと思った。
熱海に着いた。けっこうここで降りる客も多い。かなり降りたようだ。
それから沼津にも停車した。降りる客が多い。近くの席の客も降りた。
降りたスペースをねらってやってくる客がいる。無事すわった。
沼津を発車する時に臨時大垣行きらしい電車がやってきた。発車して加速している時にとなりのホームにやってくるのだ。なかなかおもしろいダイヤである。
今日は東京や品川の発車が遅れたから、特別かもしれない。
そのまま電車は進んでいった。相変わらず今日も眠れない。ムーンライトながらに乗る時はいつも眠れず、乗り換えた朝の電車で眠れることが多い。いつものことである。
ムーンライトながらは富士を過ぎた。相変わらず眠くならないまま時間を過ごす。
静岡に到着した。この車両では静岡で降りる人はいないようである。
さて、ここまでは駅間の時間は比較的短かったが、ここから浜松までは約1時間かかる。静岡を過ぎると眠れることもたまにはあるのだが、今日は眠れないようだ。
ずいぶん長い時間がかかって、ようやく浜松着である。
浜松では貨物列車がガーガー通り過ぎていく。ひょっとしたらムーンライトながらで眠れない理由はこの貨物列車の音かもしれない。東京方向に数本、そして名古屋方向に数本通っていく。
右手に東京行きのサンライズ出雲・瀬戸が停車した。ぼくは48時間後にあの列車に乗っているはずなので、もし48時間後に起きていたらムーンライトながらを見てみたいな、と思った。そしてサンライズ出雲・瀬戸はまた発車していく。
左手に臨時大垣夜行が停車した。満席のようだ。大垣にはムーンライトながらより1時間早く到着するので、ここで乗り換える人も多いだろう。
そしてまたムーンライトながらは発車した。次の停車駅は豊橋だ。
さて、今日ぼくは豊橋でながらを降りる予定である。
その理由だが、大垣〜米原間ですわって過ごすために必要だからである。
ながらで大垣まで行くと、階段を昇って降りて米原方面の列車に乗り換えなければならないのだ。
しかもながらよりも編成が短いため、すわれない人もかなりいるという話だ。
しかし、豊橋で降りると豊橋から米原まで直通の区間快速が出ていて、豊橋では確実にすわれるから、米原までずっとすわっていられるのだ。
30分ほど米原到着が遅くなるが、今回の旅行ではそれほどの影響もない。
実は今までも同様に岡崎で乗り換えて米原行きに乗っていたのだが、ダイヤが変わって大垣で乗り換えずに済む列車が豊橋始発になったので豊橋で乗り換えるのである。
さて、浜松〜豊橋間は静岡〜浜松間よりかなり所要時間が短く、なにごともなくながらは豊橋に着いた。ここで降りる。
けっこうぼくと同様に降りる客がいる。ほとんどの客は臨時大垣行きに乗り換える人だろうと思うが、ぼくと同じように米原行きに乗り換える人もいるだろう。
さて、まずは駅の北のローソンに行くことにする。豊橋は駅の北にローソンがあるのだ。
そこでとろろそばとお菓子と飲み物を買う。ムーンライトながらに乗る時はこれがもはや習慣になっている。
豊橋駅に戻った。駅の外のいすにはすでに他の客がすわっているので、改札をぬけて中に入ることにした。
今度来る米原行きは、ムーンライトながらの出るホームと違い、やや北寄りのホームだった。
降りてみると、どうやら名古屋方面から来て豊橋止まりの新快速や、その逆の新快速専用のホームのようだった。そのホームからは階段を昇らずに飯田線や名鉄線のホームに行くことができた。
東海道線ホームにはいすがなさそうだったので、飯田線のホームに向かった。幸いあいているベンチがあったので横になってちょっと眠ろうと思った。
しかし眠れない。やはり米原行きの電車でないと眠れないようだ。ムーンライトながらはこの間に発車していったようだ。
しかたなく起きて、ローソンで買ったとろろそばを食べた。こうして今日も1日が始まっていった。
豊橋駅の飯田線ホームのそばのベンチで、とろろそばを食べ終わるとしばらくすわっていた。まだ米原行きが入線するまではしばらく時間がかかりそうだからだ。しばらくして腰を上げた。
飯田線のホームから東海道線のホームに向かう。すでに何人か電車を待っている。その中の半分以上はムーンライトながらや臨時大垣夜行から降りた人たちのようだ。ぼくと同じように豊橋で乗り換えて大垣の乗り換えを回避しようとする人がけっこういるらしい。
ぼくは名古屋寄りに向かった。こっちの方はお客はいないようだ。
名古屋寄りの位置でぼ〜っと待つと、ようやく電車が入ってきた。以前に岡崎で乗り換えていた時代にも乗っていた、新快速で使われる2人がけのシートである。
乗ってしばらくすると電車が発車する。このあたりはたいてい夜行で通り過ぎている風景なので、夜明けの風景はひさしぶりである。
蒲郡(がまごおり)のあたりで高架化工事を行っているのが見えた。
7年前にここから名鉄に乗り換えたことがあり、妙にJR線と名鉄線の高架ホームの間が空いていることが気になったが、なるほど、空いている空間に高架を持ってくるからだったかと納得した。
さて、眠らなければならない。ムーンライトながらで眠れなかったので、この電車と続く米原から乗る新快速で眠る必要があるのだ。
眠れ…眠れ…と考えながら過ごすとどうやら眠れたようだ。
気がつくと車内は立っているお客でいっぱいである。
景色を見るとどうやら垂井(たるい)の近辺のようである。
既にこのあたりの景色は見飽きているのでもうちょっとうとうとして過ごした。米原まではもうすぐだ。
昔なら土曜日の学生がたくさん乗って来たところだが、もう土曜日は学校休みだし、ていうか今日は祝日だし、柏原、近江長岡、醒ヶ井(さめがい)ではそんなに学生らしき客は乗っていなかった。それよりおそらく大垣より東から乗ってきたであろう、おそらく青春18きっぷ客であろう客がかなり多い。
そして電車は米原に着いた。ここで乗り換えだ。
ゾロゾロと、ほとんどの客が向かいの姫路行きに乗り換えていく。
それでも向こうは編成が12両と長いため、なんとか通路側の席にすわることができた。こちらも豊橋からの電車と同じで2人がけである。
さて、今日はこの電車は神戸で降りなければならない。姫路まで乗る時だと米原からぐっすり眠ることも多かったが、今日はそんなに眠れないなと思いながら、やっぱり眠ってしまった。
しかし大阪を出たあたりのところで起きることができた。
それにしても暑いなあ。
電車は尼崎、芦屋、三ノ宮と過ぎていく。今日の目的地は新快速の停車しない新長田(しんながた)という駅なので、いずれ各駅停車に乗り換える必要がある。
三ノ宮でちょうどその各駅停車が向かいに停車したが、向こうは席が空いていないので、やっぱり神戸まで乗ることにする。
立ち上がって気がついた。この車両、弱冷房車だ。どおりで暑かったわけだ。
流れる汗をぬぐいながら、次に乗る時は豊橋に乗る時からずっと後ろの方の車両に乗ろうと思った。
そして新快速は神戸に着いた。ここで乗り換えだ。ぼくは電車を降りた。
新快速を神戸で降りると、ホームはなぜかひとけが少なかった。みなうしろの方に歩いていくのだ。
これはもしかしてと思い、ぼくもうしろに歩いていった。
新長田へと向かう各駅停車がやってきたが、新快速は12両と長いのに、各駅停車は短いのでうしろの方にしか停車しないのだ。走って走ってなんとか乗った。
しかもその車両は弱冷房車だった。ひゃあと思ったが、わずか2駅なのでそのまま進むことにする。
ドアが閉まり、立ったまま電車は進む。今のうちに荷物からレインボーカードを取り出しておこう。神戸の地下鉄はレインボーカードが使えるはずだ。レインボーカードを使うのは3年前に京阪で使って以来である。
電車は進んで新長田に着いた。ここで降りる。
神戸の地下鉄には6年前に乗ったきり、最近は全く乗っていないが、案内くらいあるだろうと思い、青春18きっぷを改札に見せて通り、地下鉄の入口を探した。
なんとかそれらしいくだり階段が見つかった。おりてみる。
いろいろ進むとなんとか「海岸線」と書かれた入口が見つかった。ちゃんと通るだろうなあと思いながらレインボーカードを通した。無事通った。
さらに下に通じる階段をおりた。おりた所に電車がないのはいつものことである。
さらに進んでなんとか電車のある場所に来た。乗った。けっこうお客がいるがすわれないほどではない。
じきにドアが閉まり、発車した。
順々に駅に停車していく。お客がけっこう激しく乗ったり降りたりする。
どうやらこの海岸線は、沿線の人にとても利用されているようだ。なにしろ数駅で、もう新長田から乗ってきた人がいなくなってしまうくらいだからだ。
JRの支線も通っているはずの和田岬にも停車し、「ハーバーランド」という駅(どうやら神戸駅の近くらしい)も停車する。どちらの駅も乗り降りする客がが多い。
そして電車は終点・三宮・花時計前に到着した。
見たところ、新長田を発車した時と比べてお客はすっかり入れ替わっていた。
この路線はあくまでも沿線の各駅に用事がある人のためのもので、新長田から三ノ宮に用事がある人は使わないようだ。
意外とそういう路線の方が効率よくお客を運べていいのかもしれないな、と思った。
さあ、次にめざすは摩耶(まや)ケーブルである。どうやらJRの三ノ宮駅まで行くとバス乗り場があるようだ。
おそらくここから歩けない距離ではないだろうと思い、歩くことにした。
レインボーカードを自動改札に通すと260円引かれていた。
なるほど、JRよりずっと高い。これじゃ新長田から三ノ宮(三宮)まで進む人はみんなJRを使うだろうな、と思った。
神戸市営地下鉄を三宮・花時計前で降りた。
これから向かうのは摩耶(まや)ケーブルだ。時刻表によれば三宮からケーブルの山麓駅までバスが出ているらしい。
三宮・花時計前から三宮まではどのくらいの距離かわからないが、歩ける距離だろうと思い、歩くことにした。
駅を出ると地下道が続いている。
たぶんこの地下道を進むと三宮に行けるんだろうと思いながら進んでいく。
そして適当なところで階段を昇った。
地上に出た。見覚えのある場所だ。振り返ると「阪神三宮」と書いてあるビルが見える。
目の前にはJRらしい高架がある。そして高架をくぐる道路がある。高架の南に東西に走る道路がある。
うん、ここはJR三ノ宮の西のガードだ。と思いたいのだが、地下道から出たばかりなのでなんとなく頭がここが三ノ宮であることを拒否しているような気がする。
よし、暗示をかけよう。
ここは三ノ宮だ三ノ宮だ三ノ宮だ三ノ宮だ三ノ宮だ…
よし!ここは三ノ宮だ!頭が理解したところでガードをくぐって北に進んだ。
バス停らしい場所がある。バス停の案内を見ると、ズバリ「摩耶ケーブル登り口」と書いてあった。間違いない。このバス停だ。
行列のうしろに並んでしばらく待つとバスがやってきた。しかし本当にこのバスだろうか?バスの横の案内を見ても「摩耶」とは書いていないし。
もう一度バス停の案内を見て理解しようとする。このバス停から発車するバスには摩耶ケーブル登り口を経由する便としない便があり、しない便の方が多数で、経由する便は10数分に1回くらいしか来ないようである。
バスの時刻表の時刻に○がついている便が経由便のようだ。とするとあと15分くらい待つようである。そんなわけで列をはずれて待つことにした。
それにしても変わった場所である。
バス停のすぐそばに大きな木があった。そして木からはミーンミーンとうるさくせみの声が聞こえてくる。
なんでも日本人以外の耳にはセミの声って雑音に聞こえるという話をどこかで聞いたことがある。
だったらワールドカップなんかではセミの声とかを流してサッカーやったら日本なんか連戦連勝するかなあなどとおもしろいことを考えてみたりした。
まあいいか。ちょっとうろうろ歩き回ってみよう。
建物の中に変わったジュースの自動販売機を見つけた。「横置き」の販売機だ。
古い500円玉とか使えるかなあと思って入れてみた。無事使えるようだ。
ジュースを買って飲む。ぷはー。ひといきついた。
もうそろそろ摩耶ケーブル経由のバスの発車時刻だ。たぶん地下鉄と同じようにレインボーカードが使えるんじゃないかと思い、ポケットに入れておいた。
そしてバスがやってきた。行列に並んでバスに乗った。そしてバスは発車した。
バスは北東に進んでいった。やや山沿いの場所を進んでいく。
山沿いに駅舎が建っている場所を経由した。たぶん新神戸駅だろう。
おもしろい風景だなあと思いながらバスは進んでいく。
住宅の混雑した狭い道を東に進み、しばらくするとバスは左に曲がり、細い上り坂をぐいぐい登り始めた。
どうやらもうすぐ摩耶ケーブルの山麓駅のようだ。
そして駅舎らしい場所の前に停車。
けっこう降りる客がいる。祝日だし、ケーブルのお客は多いのだろう。
レインボーカードが使えるかどうかわからなかったが、通してみたらちゃんと200円引かれて戻ってきた。
そしてバスを降りた。さあ、日本で乗る最後のケーブルだ。がんばって乗ろうとぼくは意気込んだ。
三ノ宮から乗ってきたバスを摩耶ケーブル山麓駅で降りた。
駅舎に入っていく。さすがに祝日だけあってお客がけっこうたくさんいる。
小学生の団体もいた。なかなか活気がある。
このケーブルカーはケーブルカーだけで完結しておらず、ケーブルカーを登った先でさらにロープウェイに乗っていく路線となっている。
とりあえずきっぷ売場では「ケーブル片道」と「ロープウェイ片道」だけ買うことにした。
時刻表を見た限りでは、別系統のロープウェイに乗って新神戸の方に帰れそうだからであった。
ケーブルに向かう。列に並ぶとあとから客がかなり続いて並んできた。乗ってみる。なんとかすわれた。ケーブルカーは小学生でいっぱいになった。
そして発車である。
ケーブルは登っていく。
途中トンネルを通った。こういうケーブルカーは確か比叡山のケーブルがそうだった。
6年もこのケーブルが休止していたわけは、なんでもこのトンネルがくずれてしまって、復旧させていたからだと言うことである。
生活に必要な路線は最優先で復旧させる必要があるが、生活に必ずしも必要でない路線は収益のことも考えられ、収益が上がらない場合は昔乗った向ヶ丘遊園のモノレールのようにうち捨てられてしまう。悲しいけどしかたがないのかもしれない。
ケーブルはかなり登り、ながめがいい場所までやってきたはずである。
しかし今日はちょっと曇っているのであまり神戸市内が見渡せないようだ。
そしてケーブルは、ぼくにとって最後のケーブルは登りきって到着した。小学生たちが元気に降りていく。おそらくロープウェイに乗るのだろう。
小学生たちといっしょのロープウェイに乗るのもなんだから、1本あとのロープウェイにして、ここは景色でもながめてみることにした。
駅の近くの見晴台に上がってみた。
やはり曇っていてあまり見晴らしが良くない。このあたりは三ノ宮よりも東にあるので、どちらかと言うと商業地帯よりも工業地帯の工場が並ぶ風景が見えた。なんにしても神戸はいいところである。
長い間、摩耶ケーブルの旅行記の題名を「六甲摩耶鉄道」にしておりましたが、ぼくが乗った2002年の時点ですでに「神戸市都市整備公社」の経営に移行していたことを最近になって知りました。
このためおくればせながら神戸市都市整備公社に題名を修正いたしました。長い間たいへん申し訳ありませんでした。
摩耶ケーブルを上ったところ(虹の駅という名前である)の近くの見晴台でしばらく景色をながめて、ロープウェイの駅まで歩いた。ケーブルの駅から100メートルほど登った場所にあった。
1本遅くしたが、結局次のケーブルの客といっしょになって、ロープウェイに乗ったらすわれなかった。しかし小学生はいなかったからよしとしよう。
ロープウェイが発車する。それとともに霧が濃くなっていった。
これだけ霧が濃かったことは何度もあるし、まあいいかと思いながらロープウェイを登っていく。
そして到着。はたしてここはどういうところだろう。
ロープウェイを出て歩いてみる。霧の中、かなりたくさんの人がいる。
みんな登山スタイルをしている。どうやらここは山登りの拠点らしい。
とは言ってもぼくは山登りに来たわけじゃないんだけどなあ。
付近の案内図があったので見てみた。
あれ、しまった。時刻表ではすぐ隣にあるように書かれている新神戸から登っているロープウェイはここからずっと西の方に通じていて、歩くのはとてもたいへんそうである。
こりゃ予定が狂ってしまったなあ、またロープウェイとケーブルで降りるとしたら片道しか買わなかったから往復割引がきかなくて損だなあと考えた。
何か別の交通機関があるかもしれないと思い、ぼくは霧の中をあちこち歩いてみた。
摩耶ケーブルからロープウェイを乗り継いで行った先はものすごい霧だった。
しかしさすがに祝日なので、見たところ登山客がたくさんいるようだ。
さらにうろうろすると道に出た。そこにはバスが何台も停車していた。
それらのバスの行き先は、1つはぼくが6年前に登った六甲のケーブルの頂上駅らしい。
もう1つは阪急六甲駅のようだ。
6年前に乗ったケーブルにもう一度乗るのもなんなので阪急六甲行きに乗ることにした。とりあえずバスの運転手さんに言ってバスに乗り、席にすわった。
以前能勢(のせ)電鉄のケーブルカーとリフトに乗った時、頂上にバスがあったのにケーブルの乗車券を往復買ってしまっていたためバスに乗るのをあきらめたことがあったので、たまにはこうやって往復違う交通機関を使って変化をつけるのもおもしろいなと思った。
運転手はどこかに行ってしまったのではたして本当に発車するのか不安だったが、10分ほどすると戻ってきて、ぼくだけ乗せたバスは発車していった。
しばらくは森の中を進んでいく。
そのうちやや森が切れ、大きめの建物がある場所にやってきた。そこでお客が乗ってきた。
その後も何回か停留所に停車し、どんどんお客が乗ってきて10人ほどになった。多少は使われているバスらしい。
やや晴れてきた霧の中をバスは進む。そのうち眠くなってきた。
うとうとしながらバスは阪急六甲に向けてくだっていく。
次に起きると霧はすっかり晴れていた。
バスは山をおりていき、そして終点阪急六甲に到着した。
たまたま細かいお金を900円持っていたため、両替せずにバスを降りることができた。
さて、ここから阪急に乗ってもいいが、青春18きっぷがあるのだから、やっぱりJRまで行こうと思った。
6年前に六甲のケーブルに乗った時、JR六甲道からケーブル登り口まで乗った時に阪急六甲を経由したことを思い出した。
だからここから六甲道まで歩いて行ける距離だろうと思った。
そんなわけで歩き出す。
ややくだりの道である。
阪急って、こんなに標高の高い場所を通っていたんだなあと改めて思った。
すいすいとくだりの道を歩く。今日はこれから通天閣に行く予定である。それも地下鉄には乗らず、JR新今宮から歩いていく予定である。だから予行演習になっていいかもしれない。
そんなことを考えるうちに、ようやくJR六甲道が見えてきた。さて、また青春18きっぷの出番である。まずは大阪まで乗ろうと考えた。
長い間、ここのロープウェイの旅行記の題名を「六甲摩耶鉄道(ロープウェイ)」にしておりましたが、ぼくが乗った2002年の時点ですでに「神戸市都市整備公社」の経営に移行していたことを最近になって知りました。
このためおくればせながら神戸市都市整備公社(ロープウェイ)に題名を修正いたしました。長い間たいへん申し訳ありませんでした。
自動改札の駅での青春18きっぷを使う時の難点は、有人改札で精算する人が時間がかかって待っていなければならないことなんだよなあなどと思いながら青春18きっぷを取り出して六甲道駅の有人改札を探した。
誰も並んでおらず、無事改札内に入れた。
階段を上がり、大阪方面のホームに向かう。
六甲道では新快速は停まらないし、たぶんどこかの駅で新快速に乗り換えれば大阪に早く着けるだろうけど、たぶんすわれないだろうし、各駅停車でゆっくり行こうと思った。
やってきた各駅停車はそれほどすいているわけでもなかったが、なんとかすわれた。
そしてしばらくまどろんだ。
各駅に停車しながら電車は進んでいく。
ぼーっとしていたが、時間は30分近くかかっていたようだ。
そしてひさしぶりの大阪に到着した。
さて大阪環状線に乗り換えだ。新大阪方向に歩いて階段をおり、右に曲がってずんずん進む。
そしてさらに進むと大阪環状線のホームに行ける。階段を上がって…ん?
まわりを良く見ると「下り専用階段・昇りは前方の階段を使ってください」とある。
大阪環状線は、昇りと下りの階段が分かれているのだ。それも左右に分かれているのではなく、前後に分かれているのである。
よくわからないなあと思いながら前方の階段に行き、なんとか昇った。
さて次の目的地は通天閣である。もより駅は新今宮だ。
どっちまわりで行っても良いが、なんとなく西九条・弁天町まわりの方が速そうな気がした。
どっちにしろ待つ必要がありそうだ。
お客は多そうだが、これでも山手線に比べればずっと少ないのだろう。
今度来る電車は「関空快速・紀州快速」だということだ。電車の前方何両かが関西空港行きで、うしろの残りが和歌山行きだということだ。なかなかたいへんそうだ。まあ、大多数の人は途中で降りてしまうのだろうけど。
新今宮にも停車するのでこれに乗ることにした。でもたぶんすわれないだろう。
快速がやってきた。予想通り、2人がけのシートだ。でもすわれなかった。すわれるのなら2人がけシートは快適だが、すわれないのなら空間の広いロングシートの方がよかったなあと思った。
そして快速は発車する。
ユニバーサルスタジオジャパンという施設に行く乗り換え駅の西九条に停車する。
お昼をかなり過ぎているのでそれほど降りる客もいない。
弁天町にも停車する。さてここから先は新今宮までノンストップだ。
このあたりの景色は大阪でもそれほど都会を感じさせない景色である。
左手に大阪ドームが見えた。そして南から東へと向きを変え、快速は進む。やや家々が混雑してきた。
そして左手前方に鉄塔が見えてきた。通天閣だ。そしてそれとともに快速はスピードを落とし、無事新今宮に到着した。
さて通天閣に向かおう。ぼくが新今宮を使う時はいつも南海からJRへと乗り換えることが多く、その場合南海の改札から今宮寄りのJR改札に行き、そこからホームに行くことが常だった。
この駅は天王寺寄りにも出口があるらしく、お客が向かっていく。ぼくはそれらのお客についていき、行ったことのない改札に行くことにした。
JR新今宮駅のホームを天王寺方向に歩き、くだり階段をおりた。
そこにはこじんまりした改札があった。
そう言えば、6年前の5月の旅行で阪堺電軌の恵美須町駅から新今宮に行った時、今出ようとしている改札ではなく、南海との乗り換え改札に行ったんだったなあと思い出した。
確か地上から階段をずんずん昇って、ようやく改札にたどりついたことを思い出した。
あの時、今これから出ようとしている改札から入ればずいぶん楽だったなあと考えた。
そして有人改札で青春18きっぷを出し、外に出た。さて通天閣はどう行ったらいいだろう。
目の前に地図があった。見てみよう。
なるほど。目の前の道を左に進み、適当なところで右に曲がればいいらしい。
よし、進もう。
てくてく進み、道を渡る。そしてさらに進み、ここらへんかなというところで右に曲がった。
進むと大きな大きな塔が見えてきた。通天閣だ。
2年前に梅田空中庭園には来ている。そこと比べるとなんとなくやぼったい塔だが、ちょっとした歴史を感じさせる塔である。ぜひとも登ってみよう。
…と思ったが、良く見ると通天閣の下になんとあの、とある青春18きっぷの旅行の本でも紹介されていた「餃子の王将」があった。ぼくはまだ昼食を食べていないことを思い出し、せっかくだからここで昼食にすることにした。
店に入り、定食を注文して食べた。う〜ん、値段が安いわりにはうまい味である。
おなかもいっぱいになって餃子の王将を出た。
奥の方に上に昇るエレベーターがあった。これは2階までしか通じていないらしい。
2階からてっぺんに行けるらしい。
エレベーターに乗って2階に来た。
まあおそらくてっぺんに行くのは有料だろう。さて券はどこで買うのだろう。
券が売っていた。並んで買った。
券を買うと昇りエレベーターの列に並ぶらしい。まずは並ぼう。
並ぶとまわりを見てみた。洗練されていた梅田空中庭園と違い、どことなくやぼったい感じの雰囲気である。
順番が来た。てっぺんに通じるエレベーターに乗り、乗った。登り切り、エレベーターを降りた。
そして窓に近づき、景色をながめてみる。
う〜ん、なんと言ったらいいかなあ、東京タワーに登ったような感じである。
東京タワーというのは、今は登ってもそれより高い建物がたくさんあるのである。
だからいろいろな高いビルに登ってきた自分にとってはそれほどのことはないのである。
しかし景色がほどよく調和されている。
と言うのもおそらく、どの建物も、「東京タワーにながめられる」ということを意識して造られているにちがいないからだ。だから景色はほどよくここちいいのである。
通天閣のまわりの建物も、通天閣にながめられることを意識して造られているんじゃないかと思った。
残念ながら梅田空中庭園は見あたらなかったが、東にはなんとなく動物園っぽい緑地、西のちょっと離れたところには大阪ドームが見えた。
そして景色はほどよく調和している。東京タワーと違ってそれほど高い建物もまわりにないが、梅田空中庭園よりもやや低いらしく、地上の建物がそんなにこまごまとは見えず、ほどよい景色をつくりだしている。
なかなかいい景色だなあと思いながら過ごした。さて、もう降りよう。
階段をおりててっぺんから1階おりた。喫茶店があるようだが行くこともないだろう。
そして2階に通じるエレベーターに乗って降りた。
さらに1階に降りる。
ふう、けっこう長く過ごした。次はどこに行こうか。よし、日本橋(にっぽんばし)の商店街に行こう。
そう思い、ぼくは通天閣からななめに通じる道を進んでいった。
通天閣を出たぼくは、ななめに延びている道を進んでみた。
じきに車通りの多い道路に合流した。そしてそのまま進んでいく。
そのうちなんとなく家電製品とかを売っているお店の多い大通りに来た。
どうやらここが日本橋(にっぽんばし)の商店街のようだ。
地下鉄の日本橋と恵美須町(えびすちょう)の間に位置する商店街のようである。
いつかニュースで言っていた、大阪から渋谷に進出したというナカヌキヤもあった。
多少交通の便が悪そうなことを除けば秋葉原の街に雰囲気は近い気がした。
お店の1つに入ってみたけれど、特に買いたいものもないのでまた出てしまう。
そのうち、レコード屋を見つけた。あ、そうだ、と思い、おめあてのCDを探してみることにした。
それは、岡田有希子(おかだゆきこ)ちゃんの「All Songs Request」というCDだった。
みなさんごぞんじのとおり彼女はデビューして2年という活動期間で遠くに旅立ってしまったわけだが、その2年間のアルバム内の歌を含む全曲のうち、投票で上位のものを1枚のベストアルバムにしたというCDである。
さて、レコード屋でAll Songs Requestを探したが、やはり見つからない。別のところにでも行こうかと思った。
ずっとまっすぐ進んできたが、なんとなくこのへんで左に曲がってみようと思った。いわゆるカンというやつである。
左に曲がっても日本橋の延長らしく、家電のお店が並んでいた。さらに進み、今度は右に曲がる。
ちょっとのどがかわいてきた、と、そこに無印良品の店を見つけた。ここでまたお菓子と飲み物を買っていこう。
買ってさらに進む。もう日本橋エリアも終わっているようである。
これから進みたいのはアメリカ村であるが、その前になんばを探さないといけないな、と思った。
と、ふと見るとどこかで見覚えのある左斜め前に通じる道があった。
三ノ宮の時と同じく、ここはどこかよく考えてみた。
わかった!ここは南海のなんば駅前だ!と気がつくまでにそれほど時間は要さなかった。
4年前になんばの近くのホテルで泊まったことがあり、景色を覚えていたのである。まずは見覚えのある風景にでくわせてよかった。
アメリカ村ってどっちだかわからないが、まずは北に歩いてみようと思った。
とりあえず南海のなんば駅から北に歩いてみることにした。
そう言えば、女の子と恋愛することを目的としたゲーム「センチメンタルグラフィティ」で、大阪の街をあてもなく心斎橋からなんばまで歩いてみるなどというシナリオがあったなあと思い出す。
歩いていくうちに、右手になんだかとてもにぎやかそうな一角があるのに気がついた。右に曲がって行ってみよう。
おお、ここが道頓堀(どうとんぼり)ってやつですか。
すぐそばには大きなかにの形の看板があった。昔「さんまの名探偵」というファミコンのゲームで出てきた大きなかにの看板の実物ってこういうものなんだと改めて思ったりした。
左に曲がり、にぎやかな通りを進んでいく。
日本橋はどちらかと言うと秋葉原のまねみたいなものだけど、道頓堀はまさしくここがオリジナルだなあという感じがしていいなあと思う。
さて、またなんばから歩いてきた通りに戻ろう。左に曲がって進み、戻ってきた。
ふと、道の西の方がなんともはなやかそうな雰囲気に見えた。
ひょっとしたらアメリカ村なのかもしれないなと思い、行ってみることにした。
道を渡り、西のこみちを進んでいく。
なんだかとっても外国風のお店がある。
そして、あれ、あの人黒人だ。
なんとなくここってアメリカ村なのかなあと思いながら進み、右に曲がってみた。
あ!タワーレコードだ!寄ろう!
とりあえずここがアメリカ村なのかはともかくとして、岡田有希子ちゃんのCDがあるかもしれないと思い、1も2もなく入ってみることにした。
店に入り、「J-POP」というエリアを探してみた。
あった!All Songs Requestだ!
旅先でCDを買うことがぼくはとても多い。今日もそうだ。
レジに持っていき、買った。ポイントカードも作ってもらった。
偶然なのか必然なのかわからないが、いい買い物をした。おそらくぼくが聴いたことのない歌も入っているだろう。
すっかり満足してタワーレコードを出た。
タワーレコード心斎橋店を出てしばらくあたりを歩いた。
チラシ配りの人からもらったチラシに「アメリカ村」と書いてあった。確かにここはアメリカ村らしい。
CDを買ったことだし、あとはぶらぶら歩いて雰囲気を楽しもうと思った。
ここからどう進むか考えたが、地下鉄には乗らないで、JR難波まで行って、関西本線で今宮に行き、そこから環状線で大阪に出ようかと考えた。
どうせならもうちょっと西の通を南に進もうかと思い、西に進んで南に向かった。
どこまでがアメリカ村なのかわからないが、大阪の街を十分に味わいながら難波へと向かっていった。
さて、難波の近くまで来た。JR難波は地下駅だから、どこかで地下に降りなければならない。
地下に進む階段がどこにあるかあれこれ迷い、なんとか階段を見つけ、降りてみた。
ひとどおりの少ない場所だったが、しばらく進むとひとどおりが多くなり、駅が近づいたことがわかった。
もうちょっと西らしく、また歩いてなんとかJR難波駅に着いた。さて、青春18きっぷを出そう。
有人改札は今日も精算する人で混雑している。しばらく待っていよう。
おかしい。いくら待っても人が絶える雰囲気がない。
よく見るとみんな、きっぷを窓口に出し、お金を払い戻してもらっているようである。あとからあとからそういう客が来る。
これはもしかして、と思い、腕時計の時刻と、目の前にあるJR難波発の電車の発車時刻板を見比べてみた。
思ったとおり、発車時刻より現在の時刻は20分ほど後である。これは電車が止まっているにちがいない。それでいったんJRのきっぷを買った客が別の交通機関に行こうとしてきっぷを払い戻してもらっているにちがいない。
よし、これは「振り替え輸送」になりそうだな、と思った。昔JRが止まってしまってJRの定期券で都営地下鉄〜京浜急行に乗ったことがあるが、振り替え輸送はその時以来だなと思った。(バス振り替えならあるのだが。)
ぼくはいざ、振り替え輸送に「挑戦」してみようと思い、東に歩いていった。御堂筋線で梅田にでも行こうかと思った。うまくいけば青春18きっぷで御堂筋線に乗れるな、と思った。
何分か歩き、御堂筋線の有人改札の前に来た。ぼくはいざ、「交渉」しようと意気込んで有人改札の人の前に近づいた。
御堂筋線のなんば駅の有人改札に来た。例によって質問している人がいる。
ぼくは質問している人がとぎれるのをみはからって駅員に言ってみた。
「あの〜すみません。」
「なんですか。」
「JRの奈良行きが止まっちゃっているんで、このJRのきっぷ(と言って青春18きっぷを見せた)で地下鉄に乗せてほしいんです。え〜と、振り替え輸送ってやつです。」
「奈良に行きたいの?」
「え〜と、今宮に行って、環状線で大阪に行きたいと思っているんで、大阪に行ければいいです。」
「ちょっと待っててください。」
駅員は別の客が質問してきたのを、今こっちの人の対応をしているからと言ってどこかに行ってしまった。有人改札は無人になったわけである。
しばらくすると戻ってきた。
「奈良行きは動き出したよ。」
そうはっきり言われるとどうしようもない。
「わかりました。JRの駅に行ってみます。」
ぼくはそう言ってJR難波駅にとぼとぼと向かった。
なんだかたいへんなことを頼んでしまったなあという感じがした。
こういうお願いってやっぱり迷惑なのかなあと思った。
でも関西本線が止まっていたことはわかってもらえたから、まあいいかと思った。
またまた長いこと歩いてJR難波駅の有人改札に行くと今度は払い戻しの客はいなかった。
「青春18きっぷです…あれ?」
こういう時に限ってきっぷが見つからない。なんとか見つけて駅員に見せて改札を通った。
「電車が入ってまいりますのでおさがりください。」
遅れていた電車が動き出したようだ。なんでも信号故障で止まっていたらしい。
待っていた人の大半は近鉄かどこかに行ってしまったらしく、待ち続けるお客はわずかだった。
電車が止まっていて再開する時はものすごく混雑していることが多いからこれはありがたかった。
電車が入ってきて、JR難波で降りる客が降りた。そのあとに乗り込んですわる。
しばらく待つと電車は発車した。地下から地上に出た。
そして降りる駅、今宮に到着した。ここで降りる。
確か4年前に逆コースでJR難波に来た時は、今宮ではまっすぐ降りるだけで乗り換えられたんだよなあと思っていたが、逆コースの乗り換えだとホームがとなりになってしまうので、いつもと変わらず階段をおりて昇ってとなりのホームに行った。
今宮駅のホームを説明するのは難しいが、関西本線のホームは向かい合わせになっていて、環状線のホームは、地下鉄の赤坂見附みたいに上下になっていると言うとわかりやすいかもしれない。
とりあえずまた鉄道の旅に戻れたのでがんばって進もうと思い、弁天町・西九条まわりの大阪行きの環状線を待った。
今宮駅でしばらく待っていると、弁天町・西九条まわりの大阪方面の環状線がやってきた。
今度は今宮に停車するので各駅停車である。
乗った。山手線と違い、こんな時間でもちゃんとロングシートにすわれた。
電車は発車し、進んでいく。もうあたりは暗くなり始めている。
これからどこに行くかだが、できればまた神戸に戻って、今度は「和田岬線」で兵庫から和田岬まで新しく電化された路線を通って進み、和田岬からハーバーランドまで地下鉄で行っておととし見た観覧車を見ようかなどと思っていた。
しかしよくよく時刻表を見ると、休日は和田岬線は17時すぎに1往復するだけでもう電車が終わってしまう。
今日は祝日なので休日である。
だからこのコースはあきらめることにした。
その代わり、5年前に大阪の駅構内で出石(いずし)そばを食べたことがあるので、同じお店でそばでも食べたいなあと思った。食べたら新しくできたヨドバシカメラにでも寄ろうかと思った。
そんなことを考えているうちに電車は大阪駅に到着した。ここで降りる。
ぼくは青春18きっぷを見せて改札を出て、そば屋を探した。
おかしい。見つからない。
やっぱりつぶれてしまったのかなあと思った。うまい店はすぐに失われてしまうのである。
すっかり歩き疲れた。よし、ヨドバシカメラに行こう。屋上に近い階に食堂がもしかしたらあるかもしれない。
ぼくは駅の北に出た。2年前に工事中だった場所は、真新しいヨドバシカメラになっている。
新宿とは違い、1つの建物になっているのでとても便利そうである。
横断歩道を渡り、ヨドバシカメラに入った。そしてエスカレーターを上がっていった。
各階ごとに、新宿西口店では各店舗に分かれている家電などの売り物がそこここで売られている。
お客も多そうだ。何も買えないのが残念である。
さらに昇ると、ヨドバシカメラらしくない店も見えてきた。洋服のお店である。
なにしろ敷地が広いので、家電などを置いておくだけではスペースがもったいないと思ったのかもしれない。そんなわけで上のほうの階は洋服とか売っているのだろう。さらに昇る。
するとにらんだとおり、食堂街に出た。さて何を食べよう。できればやっぱりそばが食べたい。
そば屋はあった。入って天ざるそばを注文する。ちょっと高いけど、食堂がありそうだとにらんだところに無事食堂があったのだから食べないわけにはいかない。
天ざるそばがやってきた。なぜかそばつゆが2種類あり、「あまいつゆ」と「からいつゆ」があった。
そばを2つに分けて、片方をあまいつゆ、もう片方をからいつゆで食べるのかとも思ったが、片方だけで食べてもよさそうな気がした。
だからあまいつゆだけ使い、からいつゆは残した。
最後の方になるとあまいつゆはなくなってしまったので、ちょっと残っている天つゆでそばを食べた。
出された「そば湯」もつゆに入れず、ほとんどそのまま飲んでしまった。
こうしておなかもいっぱいになった。さあ、ムーンライト高知の始発駅の京都に向かおうと思い、席を立った。
大阪駅の北のヨドバシカメラの中のそば屋を出て、エスカレーターに乗って1階に降りてきた。
ヨドバシカメラを出て横断歩道を渡り、改札に行って青春18きっぷを見せて改札を抜けた。
そして長浜方面のホームに来た。実家に電話するため公衆電話を探す。どこだろう。売店できいてみよう。
「公衆電話はどこですか?」
「そこの壁の向こう。」
店員が指さす方向に向かうと電話があった。電話しているうちに新快速がやってきたので電話を切って乗った。
今日は祝日ではあるが、なんとかすわれた。そしてゴトゴトと新快速は進んでいく。なんとなくぼーっとする。
京都に着いた。あわてて降りる。
さて、ムーンライト高知が出るまで時間があるのでどこかで休みたい。どこで休もうか。
ここでぼくは昔の旅を思い出した。6年前の10月の旅だ。
あの時、京都駅の南の方にある京阪バスのターミナルで八王子行きのバスを待ったことを思い出した。
だから今日も高速バスのターミナルで待ってみようかと思った。しかし、また京阪というのもなんなので、今度は近鉄あたりを調べてみたい。
ぼくは新快速のホームからエスカレーターを昇って、青春18きっぷを見せて外に出た。そして左に曲がり、下におりて近鉄の高速バス乗り場っぽい場所を探した。
しかし、休憩所みたいな場所は見つからない。やっぱり京阪に行こうかと思った。
ぼくは通路を進み、地下通路に出て南に進み、階段を昇った。そして6年前に来たバスターミナルにやってきた。6年前と同じようにいすが並んでいて休める。
ぼくはすわって1時間ほど過ごした。
でもやっぱりバスに乗らない人がここで休むっていうのも違うような気がする。もうそろそろ出よう。
さてこれからどうするか。
ぼくは地下通路を経由せずに駅の北に出ることはできないかと考えた。見ると、駅の東に道路があって、上り坂になっている。どうやらあの道は京都駅をまたぎ越して駅の南と北を結んでいるらしい。行ってみたらおもしろそうだ。
進んでみた。歩道もある。ぼくはえっちらおっちら登っていった。たまにすれちがう人や自転車がある。なんとか京都駅を見下ろせる場所に来た。なかなかここから見る京都駅もおもしろいものである。
そして降りていく。なんとか降りきった。やっぱり行ったことのない場所に行ってみるのはおもしろいなあと思う。
さらに歩くと、セブンイレブンが見えた。よし、ここでお菓子でも買っていこう。
ぼくはお菓子や飲み物、アイスクリーム、そしてなぜか阪神を応援する雑誌を買ってしまった。おもしろそうだったからだ。買うと溶けないうちにアイスクリームを食べる。
食べ終わったところでぼくは京都駅に向かうことにした。