1997年3月は春分の日が3/20で木曜日でした。3/21に休暇を取れば連休になります。
青春18きっぷが使える期間なので、18きっぷの5回分のうち3回分を使ってどこかへ普通列車旅行に行こうと考えました。3/22には「秋田新幹線こまち」と、「ほくほく線はくたか」という特急が走り出しますが、こういうものは走りはじめは必ず混雑しますし、あまりこだわらずに全く別のところに行こうと考えました。
ところで、とあるクレジットカードのホテルリストを見ていたら、気になるホテルの名前を見つけました。
「リバーサイドホテル」というホテルです。
和歌山線の大和二見(やまとふたみ)という駅がもより駅とのことです。
井上陽水みたいでかっこいいなあと思いましたが、それよりなにより大和二見とは絶妙な位置にあるなあと思いました。
なぜかと言うと、1996年の1月、4月、5月、そして11月に大阪近辺の私鉄はかなり乗っており(それぞれ、「123.ムーンライト高知とムーンライト松山」、「5.名古屋と京都に停まらないのぞみ」、「65.最後の往復割引航空券」、「79.関西のケーブルカーと水間鉄道」)、和歌山県の紀州鉄道や有田鉄道が残っているという状態だったのです。
そして休みの期間は3日、となれば、「113.香川と徳島の旅行(1996年10月)」の旅行みたいに同じホテルに2泊する旅行が可能ではありませんか。
リバーサイドホテルに2泊して、間の1日を使って紀州鉄道や有田鉄道に乗りに行けば全く無駄がありません。
ただし、気になることがあります。それは、有田鉄道が休日は全便バスになってしまうことです。
でもよくよく考えれば出発が3/20なら有田鉄道に乗る日は3/21で平日なのだから鉄道が運行されるはずで、この計画でOKです。
よし、これでいこうと思いました。ホテルに泊まる前の日と泊まった後の日にどこに行くかがむずかしいです。後の日はまっすぐ東京に帰らなければなりませんが、前の日はムーンライトながらで名古屋に行けば、その日1日大和二見に行くまでの時間が有効に過ごせます。
まだ乗っていない私鉄路線を計算に入れ、以下の計画にしました。
・1日目:近鉄名古屋から特急に乗って賢島(かしこじま)に行き、津まで戻って伊勢鉄道に乗り、四日市からまっすぐ大和二見に行く
・3日目:近鉄御所(ごせ)線、近鉄天理線、近鉄奈良線を乗り継いで京都に行き、京都から東京へ戻る
2日目は、有田鉄道、紀州鉄道、南海電鉄みさき公園〜多奈川、紀ノ川〜加太、和歌山〜貴志に乗ることにしました。青春18きっぷを買い、ムーンライトながらの指定席券を買って旅行の日を待ちました。
東横線の電車は、無事横浜駅に到着した。
横浜からムーンライトながらに乗るのは2ヶ月ぶりである。先月は一度目は小田原から熱海まで乗り、二度目は東京から静岡まで乗った。いまや東京から乗るより横浜から乗る回数の方が多いので、すっかり金曜の夜の横浜駅の雰囲気に慣れてしまった。
またびゅうプラザのとなりのパンフレット置き場でパンフレットを見ながら23:50を待ち、青春18きっぷの3日目にスタンプを押してもらって改札を通る。
そしてムーンライトながらがやってきた。去年の春は自転車を袋に入れて持ってくる客が多かったが、今日はそれほどでもないようだ。
小田原で指定席券を持たない客がやってくる。なんとなく眠れない。
今回の旅ではホテルに2泊するので、今眠れなくてもそれほどさしさわりはないのだが、やはり眠れないと昼間眠ってしまうことが多く、なるべくなら眠っておきたいものだが、やはり眠れない。そのまま浜松に来てしまった。停車時間にホームに出る客が多い。貨物列車がゴーゴーと音を立てて追い越していく。
浜松を出るとなんとなくうつらうつらしてきた。今日は名古屋で近鉄に乗り換えるので、いつもみたいに岡崎では降りず、名古屋まで行くのだ。どうせ今乗っている車両は名古屋止まりだから寝過ごす心配はないので眠ってしまってもいいのだが、やはりそんなに眠れず、岡崎を過ぎるくらいまでうつらうつらしていた。そんなふうにしてだんだん夜が明けていく。
そして名古屋に着いた。ここで降りる。改札を出て右に曲がる。今日は近鉄の駅まで歩かなければならない。朝食をどうするか考えたが、まずは近鉄のきっぷを買おうと思った。
名古屋でムーンライトながらを降り、近鉄に向かう。とりあえず朝食はあとで考えることにしよう。
地下街を歩いて近鉄の名古屋駅にやってきた。6年前の7月、2年前の6月に続いて3度目である。
今日は6年前と違ってあらかじめ特急券は買っていない。急行りょうもう号とは違い、乗る直前でも特急券が売っていることがわかったからである。窓口に行って賢島まで特急券と乗車券が一体になった券を買った。
発車まで30分以上有るのでぶらぶらして過ごす。ようやく賢島行きがやってきたので乗る。多少ビジネスマンが乗っているくらいでけっこう空席がある。そのうち発車だ。
地下から地上に出る。車内改札が来ないことは6年前にビスタカーに乗ったときにわかっているので安心し、ムーンライトながらであまり眠れなかったこともあってたちまち眠ってしまった。
起きると住宅がけっこう建っている山と山の間を通っている。そのうち停車する。志摩磯部だ。
だいぶ長い時間眠っていたようだ。夜行列車に乗ると、夜行では眠れず、夜行から乗り継いだ朝一番の列車で眠ってしまうことが多い。
まわりにはほとんど客がいない。志摩磯部以前に降りてしまったようだ。さすがに春分の日に賢島に行く人もいないのだろう。そのうち特急は終点、賢島に着いた。
とりあえず降りて駅のそばを歩いてみた。たいしたお店もない。駐車場と、真珠を売っている店があった。賢島は真珠の本場らしい。なにもせずに引き返すのもつまらないし、歩けばすぐ港なので、船にでも乗ろうと思った。
賢島に戻ってくる遊覧船もあるらしいが、なんだかそれではつまらないので、どこか別の港に行く船はないかと思った。それはちゃんとあった。「御座(ござ)」という港に行く船だ。
御座からは近鉄の鵜方(うがた)までバスが出ているのでそれにも乗ろうと思った。ぼくは港に行ってみた。
名古屋から乗ってきた近鉄の特急を賢島(かしこじま)で降り、しばらくあたりをながめた後で港に向かった。
港には遊覧船の時刻とともに、御座(ござ)という港に行く船の時刻が出ていた。遊覧船に乗ってここに戻るのはつまらない気がしたので、この御座行きに乗ることにする。乗船券を買う。
そして船に乗ると出航時刻になった。お客はおばさん連れが1組とぼくだけである。船は賢島の港を離れていく。
遊覧船ではないので特に船の案内アナウンスとかはなかったが、そんなものはなくても船から見える景色はおもしろいものだった。美しい島々が見えている。
何かのブイのようなものが見えた。真珠でも養殖しているのかと思ったが、三重県の海岸では真珠以外にもいろいろなものを養殖しているらしいので、何を養殖しているかはわからない。
そんな景色を見ながら船は進んでいく。だいぶ進んだところで小さな小さな港に着いた。ここが目的地、御座の港である。
船をおりてびっくりした。なんと港の近くの空き地に、ねこが約15ひき、ごろごろと集まっていたのである。
ためしに近づいてみた。逃げるねこもいたが逃げないねこもいた。逃げないねこはなでさせてくれた。うーん、天国みたいなところだなあ。
ふと見ると食堂みたいな場所が近くにあった。ねこはあとでもなでられるので、まだお昼には早いがもしかしたら営業しているかもしれないので入ってみた。無事営業しているようである。ここは喫茶店だったが食事もできるようだ。ぼくはカレーライスを注文した。
カレーライスは好きなので、よく注文する。ラーメンと違ってめったにまずいことがないのがカレーライスのいいところである。
客はぼくのほかに1人だけで、こんなのでやっていけるかと思ったが、お昼でないからすいているのであって、お昼になったら混雑するのかもしれない。食べ終わった。ごちそうさま。
ここから近鉄の鵜方(うがた)までバスが出ているが、バスまでまだ20分くらいあるので、またさっきのねこのいるところに行ってみた。
だいたい半分のねこはなでさせてくれるがあとの半分は逃げてしまうようだ。なぜこんなところにねこが大量にいるのかわからないが、バスが来るまでなでていた。
バスが来たのでなごりおしい気持ちでバスに乗る。御座はねこの思い出の地になったのである。バスは発車していく。
船と違ってバスはけっこうな人数乗っていた。10人以上乗っていたようだ。
バスは細い道を進んでいく。ところどころで乗り降りがあり、きちんと住民の足になっているようだ。きょうは祝日なので通学の人は少ないが、けっこう年輩の人も乗っていた。
バスは途中、空き地に入った。するととなりに別のバスが入ってきた。運転手が言うには「バス交換」だと言う。
御座から鵜方までは距離が長いので、「御座〜空き地」のバスと「空き地〜鵜方」のバスがあって、お客は片方のバスで取った整理券で、もう片方のバスでまとめて運賃を払うシステムなのである。なんだかよくわからないがバスを乗り換える。バスのシステムは全国さまざまでわかりにくいものである。
乗り換えたバスは発車し、同じように細い道を進んでいく。そのうち海岸沿いに出た。海の見えるいい景色である。たまに来るにはいい場所だが、生活するのはつらそうな場所である。
そんな道であるが、ようやく人家が多くなってきて、近鉄のレールも見えてきた。そして終点鵜方に到着。だいぶ長いことかかってやっと近鉄の駅に戻ってきた。
バスを降りたぼくは、ひとまず次の鳥羽(とば)方面の、特急料金のかからない電車の時刻を調べようと、鵜方の駅に入っていった。もし長く待つようなら散歩でもしてみようと思ったからだ。
御座(ござ)から乗ってきたバスを鵜方(うがた)で降りて駅に向かった。とりあえず青春18きっぷがあるので、鳥羽まで近鉄に乗ってそこでJRに乗り換えようと思い、鳥羽まできっぷを買った。
駅の時刻案内を見ると、特急、特急、特急ばかりで普通列車は特急の合間に来るようだ。でもしばらく待てばやってくる。改札を通ってホームに行き、待つと電車がやってきた。とてもすいていた。そして鳥羽の方向に発車する。
行きに見た山で囲まれた景色を見て、志摩磯部を過ぎ、もう1駅で鳥羽というところまで来ると、右手に港が見えてきた。ああそうか、ここはおととしの10月に伊良湖岬まで乗ったフェリーの出る港だ。そういえば近鉄の鳥羽のとなりの駅があったっけ、鳥羽からかなり歩いたなあと思い出した。
その中之郷(なかのごう)駅を出ると鳥羽駅に着いた。時刻表通りだとJR参宮線のディーゼル車は何分も待たずに発車だ、急ごう、と思ってぼくは近鉄の電車を降りてJRに向かった。ここは改札を出ずに近鉄からJRに乗り換えられるようだ。
鵜方(うがた)から乗ってきた電車を鳥羽(とば)で降りると、いちもくさんに階段を上がった。
伊勢市に向かうディーゼル車の出るホームを探しておりる。そしてディーゼル車に飛び乗った。しばらくしてドアが閉まった。よかった、間に合った。
やっぱり改札を出ないで乗り換えられるのはいいなあと思いながらすわる。ディーゼル車は鳥羽を出て植物の多い場所を進んでいく。
車掌がまわってきた。そうだ、ぼくはこれから伊勢鉄道を通るんだった。今使っているのは青春18きっぷだから、ここで伊勢鉄道のきっぷを買っていこう。
車掌にガリガリっと「補助券」を出してもらう。「津→河原田」と書かれた券を受け取る。うーん、いつ見てもプリンタから出てきた券っていいなあ。
伊勢市が近づいた。どうせ伊勢鉄道を通る快速みえまでは時間があるので、ここで降りていこうと思った。
伊勢市というくらいだから近くには伊勢神宮とかあるのかもしれないが、きょうは行っているひまはないなあ。いつか行ってみたいと思った。ディーゼル車は伊勢市に到着。ここで降りる。
階段を上がっておりて青春18きっぷを見せて改札を通ると、なんだか近鉄の駅っぽいところであった。鳥羽と同じくここもJRと近鉄が同じ駅になっているようだ。
まずはちょっと駅を出てみよう。駅前広場があり、バス乗り場がある。こじんまりとした市街地のようである。伊勢神宮は遠そうだ。
ちょっと食堂に入って食事する時間はなさそうだが、駅のうどんくらいは食べられそうだ。食べていこう。
うどんを注文して食べる。今日もうまい。御座(ござ)の港のそばでカレーライスを食べてから何時間もたっていないが、旅先の食事はふだん食べ慣れないものが多いので、とてもうまかったりその逆だったりするものである。でも駅のうどんでまずかったためしはない。
すっかり満足してうどんを食べ終えた。さあ、快速みえで四日市に行こう。
うどんを食べ終えて、ぼくは青春18きっぷを見せて伊勢市駅の改札を通り、名古屋行き快速みえの出るホームに来た。
じきに快速みえがやってきた。乗るとけっこうすいていた。発車する。いい景色である。
そのうち車内改札がやってきたが、ここは指定席だから、こっちの方に行ってくれと言われた。
よく見ると座席の首のうしろのところに目立たない文字で「指定席」と書いてある。ありゃりゃ。これじゃわからないだろう。
快速みえは同じ車両でも座席によって自由席と指定席を分けているようだ。とりあえずまだまだ座席には余裕があるようなので席を移ろう。
みえは多気(たき)を過ぎて松阪を通る。松阪はそれほど都会でもないようだ。でもお客がけっこう乗ってくる。そしてだんだん都会になって、津に到着。お客がかなり乗ってくる。そして発車。ここからはJRではなく伊勢鉄道だ。
とたんに車内改札がやってきた!今は青春18きっぷシーズンだから、青春18きっぷ客をねらって車内改札するのだろう。快速みえではいつも伊勢鉄道区間で車内改札をしているのかもしれないなあと思った。
鳥羽から伊勢市まで乗ったディーゼル車の中で買った「津→河原田」の伊勢鉄道の券を見せた。これでOKであった。
それにしても津の近くだと言うのにこのあたりは畑が広がるばかりの景色である。
県庁所在地に直接乗り入れている国鉄線が第三セクターになってしまっているというのは伊勢鉄道くらいなものだろう(その後盛岡、青森、長野、富山、金沢もそんな駅になった。水戸に乗り入れている鹿島臨海鉄道は国鉄だったことはない)。このあたりは道路が渋滞するということもなさそうだし、かなり自家用車が普及しているのかな、と思った。今快速みえに乗っているのも青春18きっぷ客が多そうだ。
景色は畑ばかりだが、紀伊勝浦までの特急が通る路線だけあって、路盤そのものは良く、あまりガタガタしない路線である。快適にディーゼル車は進んでいく。
そして河原田を過ぎたようで、関西本線に入った。そしてそれほど都会にもならないうちに目的地、四日市に到着である。
もうだいぶ日が傾いてきた。今日は和歌山線の大和二見(やまとふたみ)まで行く予定だが、この分だと到着は午後8時ごろになりそうだな、と思いながら、ぼくは快速みえを降りた。亀山行きまで時間があるから、いったんトイレに行っておこう。
伊勢市から乗ってきた快速みえを四日市で降りて、階段をのぼっておりてトイレに行き、また階段をのぼっておりてホームに戻ってきた。ぼーっと電車を待つ。
電車がやってきた。いつも亀山行きは大垣行き夜行を名古屋で降りて乗ることが多いので、このあたりは学生で混雑している。でもさすがに午後のこの時間はすいている。ゆっくりすわると電車は発車する。
河原田で伊勢鉄道と分かれ、原っぱの中を電車は進む。ところどころ森が見える。このあたりの鉄道にはかなり乗ってしまったので次に来るのはいつになるかわからない。しっかり景色を見ておこう。
そんなふうにして電車は進み、終点亀山に到着した。ここで加茂行きに乗り換えだ。たぶん加茂に行く途中で日が暮れるだろうなあと思いながら、電車を降りた。
四日市から乗ってきた電車を亀山で降りて、階段をのぼっておりて、加茂行きの出るホームに向かった。そこには、去年も乗ったオールロングシートのディーゼル車が停車していた。乗ろう。
学生っぽい人たちがけっこう乗っている。きょうは祝日だが、祝日でもけっこうJRに乗っている人がいるものだ。部活かなあ。ぼくが高校生のころは、めったに休日に国鉄に乗ることなんかなかったけどなあ。
ディーゼル車は進み、四日市から亀山までの平地の風景とは一変して森の中に入っていく。そして森の中を進む。
だいぶ長いことかかって次の駅に着いた。そして各駅に停車するたびに学生たちが降りていく。日も暮れてきた。
車内はがらがらになった。もう景色は見えない。近くを川が流れているようで、多少あかりが見える。そんなうすぼんやりした中をディーゼル車は進む。川から離れ、また山の中に入ったようだ。そして終点加茂に到着だ。
これから乗る電車は、階段を上がっておりて乗り換えが必要である。去年1月にこの駅を通ったときはホームの向かいの電車に乗ればよかったけどどうしてだろう?どうせ階段をのぼりおりする必要があるのならと思い、ぼくはディーゼル車を降り、いったん改札を出てしまうことにする。しばらく待合室で休もう。
しばらくホームを見ていると、名古屋行き急行かすがが通過していくのが見えた。
どうやらかすがに道をゆずるためJR難波から来た電車がふだんのホームに停車できなくて、それでこの時間だけ乗り換えに階段ののぼりおりが必要なダイヤになっているらしい。
いつかかすがにも乗ってみたい。急行だから青春18きっぷでは乗れないけど、東京都区内発のワイド周遊券やミニ周遊券にかすがに全区間乗れるものがあったから、いつか周遊券を使って急行券なしで乗ってみよう、そう思った。
さあ、JR難波行きに乗ろう。時間に若干余裕があるのでいったん奈良で降りてみようかと思った。
亀山から乗ってきたディーゼル車を加茂で降りて待合室でしばらく休み、ふたたびホームに戻って電車に乗る。
こちらは米原から姫路まで走っている新快速と似たような2人がけシートである。すわってしばらく待つと発車である。
もう景色は見えない。木津に停車して、さらに進むとあかりがたくさん見えてきて、奈良駅に到着した。きょうはここで降りよう。駅弁でも買っていきたい。
電車を降り、青春18きっぷを見せて改札を通る。奈良駅の外に出るのは初めてである。
天井が高い。そして天井のすすけぐあいが、この駅がとても古いことを物語っている。さて、駅弁は何がいいかな。
駅弁売り場で気に入ったものは、「柿の葉ずし」という駅弁だった。なんだか変わった駅弁っぽかったからである。でもあまり量が多くなさそうだなあ。やっぱり食堂に行きたいなあ。
駅の外に出たが、10数年前に修学旅行で来た奈良の姿はそこにはなかった。あの時行った場所はここから離れているのだろう。確かに市街地ではあるのだが、どことなく市街地のはずれといった感じである。
それでもすみっこの方に小さい食堂がある。満席かなと思いながら入ると席はあった。焼肉定食を注文する。やってきた。きょうもうまい。
すっかりおなかもいっぱいになり、こうして旅行1日目が終わっていく。
柿の葉ずしはあしたの朝にでも食べたいが、賞味期限はいつになるかホテルで確認して、期限が短いようならすぐ食べてしまおうと思った。そして18きっぷをふたたび見せて天王寺の方に進む電車に乗る。電車が発車。
暗いのでどこを通っているかわからないが、去年何回も来た王寺(おうじ)にまた着いたので電車を降りる。さあ、和歌山線に乗り換えだ。
関西本線の電車は車両数が多いので、連絡階段までがけっこう遠い。歩いてなんとか階段にたどりつき、のぼっておりて五条行きの電車までたどりついた。めざす大和二見(やまとふたみ)に行くには五条でさらに乗り換えだな、と思いながら、ぼくは電車に乗った。