1995年から1997年まで、いつも10月は体育の日の前の日か後の日1日を休暇にして、鉄道の日記念きっぷを使って普通列車の旅行に出かけていました。
しかし1998年は、過去3年間と違い、体育の日が土曜日です。1日休暇にしてどこかに行くのはちょっとやめておきたいです。ですので、今回は鉄道の日記念きっぷの旅行はやめておこうかとも思っていました。
夏の青春18きっぷシーズンが終わったころ、そういえば雑誌に羽田から福岡まで13700円という、めっぽう安い航空機が誕生するというニュースをやっていたなあ、と思い出しました。
そしてたまたまコンビニで売っていたため買っていた「東京時刻表」を開くと、くだんの航空会社、スカイマークエアラインズの電話番号も載っていました。
クレジットカードで予約可能と雑誌には書いてありましたが、ぼくはクレジットカードを持っているので、ためしに電話をかけてみようと思いました。もちろん予約するのは鉄道の日記念きっぷが売られているシーズンです。ただ、体育の日は避けておこうと思い、1週間後にしました。
たぶん予約開始と同時にドドドッと売れてしまっているんだろうなあ、でももし予約できたら鉄道の日記念きっぷを買おうと思いました。
そうしたら、なぜか予約できてしまいました。ひやー!
そんなわけで、今年も鉄道の日記念きっぷを買うことにしました。
当初の予定は以下の通りでした。
横浜(ムーンライトながら)岡崎→米原→姫路→岡山→広島→下関→小倉→博多→大牟田→熊本→八代(特急ドリームつばめ)伊集院(バス)枕崎→西鹿児島→川内(つばめ)水俣→八代→大牟田→博多(地下鉄)福岡空港(スカイマーク006便)羽田空港
指宿枕崎線はとても行きにくいので、ドリームつばめを使って行こうと思ったわけです。
ですので八代→伊集院と川内→水俣の乗車券と特急券をあらかじめ買っておきました。
上の旅行では鉄道の日記念きっぷの2回分しか使わないので残り1日分でどこに行こうか考えました。
なにしろ、この年は有効期間のはじまりが日曜日で、なぜか前の土曜は使えませんでした。
もしも土曜から使えたらムーンライトながらで高山に行き、翌日高山発新宿行きの高速バスで帰って来ようかと思っていたんですが、うーんどうしよう。土曜に高速バスでどこかに行って帰って来よう。
でも予約はめんどうだから空席があったらでいいや。なかったら身延線にでも行こうか、などと考えました。
さて、体育の日の1週間後が近づきました。
なんだか天気予報で台風が近づいていると言っていました。まあいいや、行けるところまで行こうと思いました。
なお、1998年当時の東京時刻表には航空機の発着時刻が掲載されておりましたが、2010年現在、東京時刻表に航空機の発着時刻は掲載されておりません。
まことに残念なことですが、深いわけがあるのでしょう。
東横線の電車は、無事横浜駅に到着した。
きょうの東横線も混雑していた。2年前にムーンライトながらが走り出してから、東横線で横浜に行って横浜からムーンライトながらに乗ることが多い。
横浜には特に待合室があるわけではないので、びゅうプラザ横の旅行のパンフレットが並んでいるところで午後11時50分ごろまで過ごす。11時50分になれば、ムーンライトながら指定席券といっしょに鉄道の日記念きっぷを出すと翌日(10分後。)のスタンプを押してホームに入れてくれるわけだ。
いつもなら小田原までの指定席券で岡崎まで行って米原行きに乗り換えるところだが、小田原を過ぎると通路までお客でいっぱいになって、トイレに行きにくいのが難点だった。
ところが今回めずらしく岡崎まで指定席が取れた。これで岡崎までうるさい客は来ないだろう。
いつものようにホームで待つとムーンライトながらがやってきた。禁煙車に乗る。
これから九州まで長い旅の始まりである。いつものように小田原に着くが、この車両に客は乗ってこない。こんな静かな小田原以降のながらは初めてである。熱海までは夜の海が見え、丹那トンネルを通る。
そして静岡に着いた。
おばさん2人と子供連れがやってきて、若い男がすわっているところで、
「そこ私の席です」
と言った。
ぼくは、ああ、小田原までしか指定席を取ってなくて、4〜9号車だったら小田原から自由席だからそのまま乗っていられるけど、ここは名古屋まで指定席だから、静岡からの指定席の人がやってきたのだろうと思った。若い男は荷物をまとめてうしろの方に行った。たぶん彼はおりる駅まですわれないだろう。
あとはいつものように浜松で貨物列車に何本か抜かれ、豊橋でも長いこと停まって岡崎に着いたのである。いつものように改札を出てコンビニに行こう。
岡崎のコンビニで朝食を買って改札を通ってホームに戻ってきた。いつものように米原行きに乗る。大垣行き夜行を岡崎で降りて米原行きに乗るという旅行を1993年11月から続けている。どういうわけか夜行では眠れず、夜行の次の列車ではぐっすりと眠れるのだ。
持ち込む食事は電子レンジで温める弁当ではなく、もっぱらとろろそばである。今日もそうだ。転換クロスシートでとろろそばを食べているうちに電車は岡崎を発車する。食べ終わるとぐっすりと眠ってしまう。
気がつくと大垣を過ぎていた。お客はいっぱいいるが青春18きっぷシーズンほどの混雑ではない。そのまま米原に着く。ホームの向かいの姫路行き新快速に乗り換え、無事席に着いた。
さて、ここではラジオでも聴いてみようと思う。イヤホンをつけてラジオを聴いてみる。FMにしよう。ダイヤルを回すと滋賀県の放送局らしいFM局の放送が聞こえてきたので聴いてみる。しかしまた眠くなってきた。今日は姫路まで乗るので、ラジオを切ってまた眠ることにした。
次に起きると目の前に明石大橋が見えた。7月に高速バスで洲本に行ったときに渡った橋である。いいながめであるが、雨が降り出していた。
天気予報では台風が近づいていると言っていたが、はたして今日とあした、無事JRが動いてくれるだろうか?
いちおう無事に動いた場合に鉄道の日きっぷで乗れない特急に乗るためのきっぷを買ってはいるが、もし鉄道が動かなくなるようなら旅行中止証明をもらってあとで払い戻さなければならない。
でも鉄道が動かなくなる前に払い戻したら手数料がかかるだろう。だからダイヤどおりに列車が動いているうちは払い戻したくない。
そうこうするうちに姫路に着いた。改札を出てトイレをすませてホームに戻る。
今度の三原行きは、青春18きっぷシーズンなら姫路ですわれないと岡山まですわれない列車である。電車がやってきて、無事すわれた。鉄道の日きっぷシーズンだとそれほどの混雑でもないようだ。またちょっと眠ろう。
今度はそれほど眠れず、しばらく起きたまま岡山に到着である。ここで駅弁を買うことにする。「祭ずし御膳」という駅弁を買うことにした。豪華な駅弁だったが難点があり、しょうゆやソースをかけたいおかずとかけたくないおかずが混じっているのだ。
岩国の方に行く電車に乗り、駅弁のふたをあける。まずソースやしょうゆをかけたくないおかずを先に食べてしまうのだ。それからソースをかけるおかず、しょうゆをかけるおかずを分けてソースとしょうゆが混ざらないようにかける。そして残りのおかずを食べる。
無事食べ終わると笠岡のあたりを電車は走っていた。またFMラジオでも聴くことにする。でもしばらくするうちに飽きてきた。よし、MDヘッドホンステレオを聴こう。
昔シングルCD用のCDヘッドホンステレオを買ったことがあるのだが、歩きながら聴こうとすると音飛びするのが難点であった。その点MDだと音飛びしなくて良い。MDを聴きながら広島に着いた。ここで降りて下関行きに乗り換える。ここまでダイヤ通りに着いた。
下関行きに乗り、徳山を過ぎてしばらくしたころアナウンスがあった。「台風による大雨により地盤がゆるんでおりますので徐行運転いたします。」あーついにきたか。
当初の予定では広島→下関→小倉→博多→大牟田→熊本→八代(ドリームつばめ)伊集院(バス)枕崎→西鹿児島という予定だったが、この旅行ができる前提条件として、「19:45下関発の小倉方面の列車に間に合うこと」というのがあった。もしも間に合わなければ普通列車だけで八代には行けなくなってしまう。
ぼくはむしろ、間に合わない方がいいのかな、と思った。今間に合わなければ、まだ窓口は開いているから旅行中止証明も受けられるし、飛び込みでホテルも予約できるだろう。かえって下関みたいな都市でなく、ホテルのまばらなところで運転打ち切りになった方が大変である。
列車は長いこと徐行し、ようやくもとのスピードに戻ったが、回復運転をするわけでもなく、20分遅れて下関に着いた。
ためしに発車待ちの小倉方面の列車の車掌に「この列車は何時何分発ですか?」ときいたら「20時XX分発です。」とこたえたので、ああ、19時45分発は待っていてくれなかったんだな、と思った。ということは無手数料で八代→伊集院のきっぷを旅行中止にする条件が整ったというわけだ。よし、窓口でがんばって交渉することにしよう。まずは改札を出る。
窓口で「八代→伊集院」「川内→水俣」の乗車券と自由席特急券を出し、「手数料なして払い戻せるように、旅行中止証明をしてください」と言った。
「払い戻し?手数料が210円ずつかかりますよ」
「いや、19時45分の列車に間に合わなかったでしょ?間に合えばこのきっぷを使う旅行ができたけど、間に合わなかったのでこの旅行の行程を変えることになったんです。だからこのきっぷが使えなくなったんです。」
「でもこれ、あしたのきっぷでしょ?」
「あしたのきっぷでも旅行中止できるはずです」
下関駅員はいろいろと話し合っていたが、結局きっぷに「台風XX号による旅行中止」と書かれてはんこが押されて戻ってきた(このきっぷは翌々日無事払い戻し手続きができてお金が戻ってきた)。礼を言って公衆電話に向かい、ホテルの予約をする。2軒目で予約できた。
ついでに実家にも電話する。きょうホテルに泊まることにしたと言うと、母親はうれしそうだった。夜行2連泊よりはまし、ということなのだろう。
下関駅の食堂で夕食を食べてホテルに入る。ホテルでテレビを見ると台風は枕崎に上陸、九州のJRはのきなみ運休、となっていた。風呂に入って寝る。
翌日は快晴である。今日福岡から乗るスカイマークエアラインズはちゃんと飛びそうだ。ホテルの朝食を食べて出発。下関から電車に乗って、8ヶ月ぶりに九州に突入である。門司を過ぎ、小倉に着いた。ここで降りる。
鹿児島まで行くつもりだったが、今回は福岡近郊の旅にしようと思う。
このあたりで乗っていないのは、小倉のモノレール(小倉〜平和通)と西鉄大牟田本線(西鉄久留米〜大牟田)である。モノレールは平和通で降りてしまうのはもったいないが、企救丘(きくがおか)まで乗る必要はないので、城野で降りてJRの駅まで歩こうと思った。
また西鉄は、どうせ今日は天神に行くつもりだから大牟田から西鉄福岡まで乗ろうと思った。
JRの改札を出て、モノレール乗り場を探してみた。
小倉の駅を降りると、モノレールへの案内があった。JRの駅の中にホームがあるようだ。
去年乗った時に比べると格段に乗り換えやすくなっている。
城野(じょうの)まできっぷを買って自動改札をくぐり、ホームに行ってモノレールに乗った。午前中なのでそんなにお客はいない。
たちまち平和通(へいわどおり)だ。去年乗った小倉駅が、新しく小倉駅ができたので改称したのである。
乗りつぶし目的ならここで降りて小倉に戻ればいいのだが、それじゃもったいないので日豊本線の駅が近いであろう城野まで進むことにしたのである。
この前は夜だったが今度は昼間である。きれいな明かりの代わりにながめの良い景色を見ながら小倉市街をモノレールは進んでいった。
そして城野駅に着いた。モノレールを降りてきっぷを自動改札に通して外に出た。
さてどっちに進もうか。たぶんここは日豊本線よりも西側だから、東に進もう。
ちょっと歩くとダイエーを見つけた。ちょうど朝10時で開店するところだった。ここで買い物をしていこう。
あれこれ迷いながら買い物をしているうちに、いつのまにか30分たってしまった。ぼくが旅行先でダイエーとかイトーヨーカドーとかに寄る時は、いつもこうなってしまう。
買い物も十分したので、再び歩きだすことにした。
まずは日豊本線を探して東の方に歩いてみた。なんとか線路を見つけた。線路をくぐる道を通って、次の交差点を右に曲がった。たぶんこっちにJR城野駅がありそうだと思った。
さらにてくてく歩いて、なんとかJR城野駅に着いた。ぼくは駅舎の中に進んでいった。
日豊本線の城野(じょうの)駅の改札に鉄道の日記念・JR全線乗り放題きっぷを見せると、
「これ、どこで売っているんですか?」
と改札員がきいてきたので、
「JTBや日本旅行や東急観光や…えーとえーと…近畿日本ツーリスト!で売っていますよ。」
と答えたが、よくよく考えたら、それはともかくこの駅でも売っているはずなのにな、と思った。
階段を昇って降りて、案内に書いてあった3番線に行くと、
「本日は下関行きは5番線ホームより発車します。」
というアナウンスがあったのでまた階段を昇って降りて5番線に行く。
ここはふだん日田彦山(ひたひこさん)線が発着するホームらしく、ホームの発車列車案内も日田彦山線のものがほとんどだ。
しかも5番線は架線があるが、向かいの6番線は架線がない。
しばらく待つと下関行きが到着した。さらにアナウンスがあった。
「遅れておりますソニックが通過するまでしばらくお待ちください。」
どうもきのうの台風の影響が特急に残っていて、それで遅れているために普通列車の発車ホームが変わったとのことだ。
どうやらJR九州では、特急が遅れると特急が普通列車を追い越す駅を柔軟に変えているようだ。
なかなか東日本でそういうことをやっているという話は聞かない。
ソニックがごおおおと通り過ぎていく。
やっと発車だ。
モノレールが近くを通っているだけあって、小倉の市街地の一部というかんじの路線をゴトゴト通っていく。
そして電車は西小倉駅に着いた。さあ、鹿児島本線で大牟田(おおむた)に行こう。
西小倉で電車を待ったが、やっぱり小倉まで行った方が良かったかもしれないと、ホームで考えた。
なにしろダイヤが乱れているとはいえ、通常は小倉から博多までは快速で行った方が早いのだ。
まあ、快速は混雑していることが多いからと思い、まずはすわれる各駅停車に乗ってみることにした。
鹿児島本線の電車は快速も各駅停車も快適なのである。
八幡が近づくと、ここで特急に追い越されるとアナウンスがあった。まずは降りてみる。
九州は、特急が遅れると柔軟に普通列車の運行、特に追い越し駅を変えているようだ。なかなかむずかしいことをするものだ。でも東京、大阪ほど列車が多くないからできることなのかもしれない。
と、そんなことを考えているうちにいきなりどしゃぶりの雨が降ってきた。
やっぱりきのうの台風が明けたとはいえ、まだまだ天気が不安定なようだ。
たぶん雨はそんなに続かないんじゃないかと思った。
特急が通り過ぎていく。今度は快速にも追い越されるようだ。乗り換えることにしよう。
快速が到着した。さすがに座れなかった。混雑した中、快速はつっぱしる。
黒崎、折尾、赤間、香椎とどんどん混雑していく。いつのまにか雨はやんでいるようだ。
博多でぞろぞろ降りていく。まあ、そりゃそうだ。なんとかすわれた。
夜行列車旅行ならここでぐーぐー寝てしまうところだが、今日はホテルに泊まった後なので、ちゃんと起きて景色をながめていた。二日市、鳥栖を過ぎていく。田園風景はいつ見ても気分がいい。
ほとんどお客も乗ってこないまま大牟田に着いた。
大牟田で降りると、ホームで駅弁を売っていた。もう12時を過ぎているので買って食べてもいいだろう。
「たいらぎ寿司」という駅弁だった。西鉄の車内で食べようと思い、階段を昇って西鉄のホームへと向かった。
大牟田駅のJRの方のホームで買った駅弁を手に、案内に従って西鉄のホームの出入り口にやってきた。
いったんJRの改札を出る必要があるので、鉄道の日記念・JR全線乗り放題きっぷを手に取ってまずは改札を出る。そして券売機で西鉄福岡までのきっぷを買った。
今度の西鉄福岡行きの特急まではちょっとだけ時間があるので、ふう、と一息深呼吸してから西鉄ホームに入った。でもあまりお客がいない。
やっぱりきのうの台風のせいで、福岡の人も出不精になっているのかなあ、などと思いながら特急に乗った。
今年の2月に乗った特急と同じで、2列席である。
駅弁を広げた。「たいらぎ寿司」という駅弁である。すしめしを主体としたちらしずし風の駅弁である。
いろいろなおかずがあるが、めんたいこがあった。
このままゴミにしてしまうのもしのびなく、一気に口におしこみ、すしめしをほおばってバリバリ噛んだ。
意外とからしはきいていなかったようだ。残りのおかずも食べきった。これで夕飯までもつだろう。
電車は大牟田から田園風景を進んでいく。
そして特急は柳川に着いた。なんでも観光地の柳川は多少離れた所にあるとのことだ。
ここには広い車庫があったので、観光地というよりも広い車庫の用地を確保するためにここを経由したような気がする。
ちょうど東海道新幹線が、熱海と静岡の間で広い車庫用地を確保できるのが沼津ではなく三島だったため三島に駅ができたのと同じようなことなのかもしれないなあ、と思った。
電車はさらに進み、JR鹿児島本線らしい線路をまたいで進んだ。そのまま高架を進むと高いビルが増えていき、西鉄久留米に到着した。
あとは今年2月に通ったところだからと安心してぐーぐー眠ってしまい、気がつくと西鉄福岡の1駅手前の薬院(やくいん)駅を出るところだった。
今回の旅は、台風から始まって、なんだか無駄な時間を過ごしたような気もするが、まあこんな旅行もいいんじゃないかと考えた。それに今回はスカイマークエアラインズに乗るという最大のイベントが控えている。
特急は高架に上がり、西鉄福岡駅に到着した。この前はホームをまっすぐ進んで改札に行ったが、この駅は東急東横線の渋谷駅と同じで(1998年現在)、ホームの途中に下り階段があるため、おりてみることにした。改札があったので出てみる。
今回もめんたいこを買って実家に送ることにする。この前とは別のデパートで買って送ることにした。
さて、どうしようか。この前は親不孝通りに行こうとして、まちがって中洲大通りを通ってしまったので、今度こそ親不孝通りに行こうと考えた。
めんたいこを買ったデパートを出て歩く。親不孝通りは天神からちょっと西に歩くとあるらしい。
あれ、見覚えのある吉野家だ。
すぐにそこが、5年前に出張で天神に来た時に1日目の夕食を食べた吉野家であることに気がついた。
とするとこっちの方にローソンがあって…ん、ローソン舞鶴一丁目店とある。ここも出張した時に来た。しばらくの間、ぼくが行ったことのある一番西の地点はこのローソンだったのだ。
確か親不孝通りとは天神と舞鶴の境界の道路だという話だから、このローソンの前の道が親不孝通りだということなのだろう。ということは5年前にここを通っているということだ。なんだか疲れてしまった気がする。
まあいいか、ローソンは帰る時に寄ることにして、とりあえず北に進んでみよう。
右手に郵便局が見えた。よし、ここでお金をおろしていこう。
社会人になってから、銀行のCD機が近くにあって、郵便局のCD機が遠い生活がずっと続いている。
まして今日は日曜日、銀行は引き落としに手数料がかかるが郵便局ではタダだ。
だから郵便局ではお金をちょっとでもおろしておくと得をするような気がするのだ。
お金をおろしてさらに進む。
つきあたりだ。建物の間から原っぱが見えて、その向こうに高速道路が見えた。
なかなか都会と海辺の中間という感じでおもしろい所である。とりあえず大通りに沿って左に曲がった。
右手にラーメン屋が見えた。よし、入ろう。駅弁を食べてしまっているが、ここまで来てラーメンを食べない手はない。
ラーメンを注文して、出てきたのはとても細い麺であった。
これがとんこつスープというものらしい。
大牟田の駅弁を食べてちょっとおなかがいっぱいになっている身としては、ちょっと量が多いような気がするラーメンであった。おなかがすいている時に来た方が良かったかもしれない。
まあ、うまいことはうまい。今になって思えば、あれからものすごくまずいラーメンを何回も食べているので、それを考えるとあのラーメンもうまかったと思う。
ラーメンも食べたことだし、もうちょっと歩いてみよう。店を出て西にちょっとだけ進み、適当な所で左に曲がる。もう1回左に曲がる。なにしろさっきのローソンで買い物をする必要があるのだ。
東に向かうその道は、なんとなく「音楽通り」といった感じのする場所だった。ライブハウスのような建物があり、そのまわりには、いかにも音楽ファンというような女性たちがたくさんいる。天神は音楽の街なんだなあ、と改めて感じる。
また親不孝通りに戻ってきた。南に進んで、ローソンに着いた。もうそろそろ弁当を買ってもいいだろう。
ローソン舞鶴一丁目店に入った。
「いらっしゃいませ」
そこにいる店員はなんとスキンヘッドの若い女性であった。
ぼくが何年も旅行してきて、これほど驚いたことはなかった。
さすがに音楽の街、天神だ。この女性は、ロックか何かの音楽のファンで、それでスキンヘッドにしているのかもしれない。こんな女性がローソンでバイトできるのだから、天神って、親不孝通りってすごいところなんだろうなあ、と思う。
とりあえず、航空機の中で食べるお菓子や食事を買う。食事は空港の待合室で食べてもいいかもしれない。
ひととおり持って、レジに向かう。
スキンヘッドの女性は、慣れた手つきでPOSを操作して、クレジットカードを扱っている。
「ありがとうございました」
そんなわけでなんとも不思議な世界であった。
今回の旅行は、この女性に会うための旅行だと言っても過言ではないかもしれない。
もうそろそろいいだろう。ローソンを出て天神駅に戻ってきた。
きょうはスカイマークエアラインズに初めて乗る日だ。スカイマークエアラインズではおしぼりは出ないという話なので、城野(じょうの)のダイエーでウェットティッシュを買っている。
何回目かの天神駅の地下街に入り、きっぷを買って自動改札を通って空港行きの地下鉄に乗った。
いったいスカイマークエアラインズのシステムはどんなものなんだろう、どうすれば13700円で羽田まで行けるんだろう、と不思議に思っているうちに地下鉄は博多でたくさん客を降ろし、空港駅に着いた。階段を昇り、きっぷを自動改札に通して空港に向かった。
地下鉄の福岡空港駅を出て、空港に向かった。
今日は初めてスカイマークエアラインズの航空機に乗る。なにしろ13700円である。どんなものだろう。
今日は今まで乗った全日空や日本エアシステムと違う場所が窓口だ。とりあえずクレジットカードを渡す。窓ぎわの席が空いているようだ。そこでクレジットカードと一緒に渡されたのは、なんとレシートみたいな感熱紙だった。ちゃんと「Boarding Ticket」と書いてある。
城野のダイエーで買ったお菓子やウェットティッシュ、それからローソン舞鶴一丁目店でスキンヘッドのお姉さんから買った弁当の入った袋を持ち、それ以外の荷物を預ける。
そしてX線検査だ。これはどの航空会社も共通である。さっきの感熱紙を見せるといつもと同じように検査を通る。そして教えられた番号の場所に行く。
お客はたくさんいる。つまり満席ということだ。13700円なので当然だろう。荷物は軽い方がいいので、ここでローソンの弁当を食べる。食べ終わるとお客はさらに増えていた。じきに出発時刻の20分前になるが、
「もうしばらくお待ちください」
と受付の女性は言うばかりである。
だいぶ時間がたって、
「それではこちらです」
と案内されたのは、いつもとは違い下り階段だった。そして階段をおりるとバスが待っていた。今年の2月にも福岡から羽田まで航空機に乗った時、羽田でバスに乗ったが、ここは福岡でもバスらしい。やっぱり13700円だからだろう。
バスを降りた目の前に見えたのは、ディレクTVの広告が書かれた機体と、7年ぶりに見るタラップだった。そしてタラップをのぼって自分の席を探す。窓ぎわの席はもちろん空いていた。荷物は預けてあるので、袋を持ってすわる。なんとも狭い席だった。
この路線は機内でガンガンとディレクTVの宣伝をするのである。それで13700円でやっていけるようだ。まあ、音声はヘッドホンを使わないと聞こえないので、その分は安心なのだが。
去年の2月と同じコースのようで、南に向かった航空機は左に曲がり、四国の南の方を飛んでいるようだ。
「りんごジュースはいかがですか」
乗務員の声がして、ぼくはジュースを受け取った。どうも飲み物はりんごジュース1種類らしい。
全日空とかだとスープとかウーロン茶とかあるのに、なぜお茶でなくてりんごジュースなのか考えたが、なにしろ13700円なのでたくさんの種類が置けないのだろう。
ウーロン茶を置かないのは、お茶には利尿作用があるから、なるべくトイレは使って欲しくないということなのかな、と思った。
おしぼりはないと聞いていたので持ってきたウェットティッシュで手を拭いてりんごジュースを飲む。
そのうち眼下に関西空港らしい地形が見えてきた。大阪湾にぽっかり白く光る四角い地形が見えるのだ。とてもきれいである。
羽田が近づくと、外国映画が消え、日本シリーズが映るようになった。衛星放送だろう。BSではなくてディレクTVのメニューの中の日本シリーズかもしれない。
いつものように房総半島の上を通り、東京湾が見えてくる。おお、あれは今年のはじめに通った、アクアラインの海ほたるではないか。空から見ると船が浮かんでいるように見える。
そのまま滑走路が見えてきて着陸である。
降りるときヘッドホンを持ってきてくださいと言われた。なにしろ13700円なので、ヘッドホンを回収する人手も惜しいのだろう。たいへんだ。ヘッドホンを乗務員に手渡し、タラップを降りた。そしてバスに乗る。
バスは右に曲がったり左に曲がったりして長いこと進む。立体交差の上の方を通る。下を通るのは一般道らしい。スカイマークは相当遠いところに着陸するようだ。
なんとかターミナルに到着した。バスを降りてちょっと歩くと荷物受け取り場所である。
今年の2月もそうだったが、羽田でバス連絡のときは、連絡通路のときと違い、歩く距離は短くてすむのだ。そして荷物を受け取る。
さあ、券売機に向かおう。いつものようにモノレール→京浜急行乗り換えのきっぷを買う。このきっぷを買うのも最後になりそうだ。なにしろ今度京浜急行が羽田空港まで延びるそうだからだ。ぼくが持っているルトランカードも使えるだろう。なんにしても便利になるのはいい。
今回の旅は台風に遭ったため、今日は鉄道の日記念・JR全線乗り放題きっぷを3060円分乗ることはできなかったけど、けっこう充実した旅だなあと思った。今年の旅行も終わった。
来年はどんな旅が待っているのかなあと思いながら、ぼくはモノレールに乗った。