目が覚めた。
ここは名古屋にあるホテルキャッスルナゴヤである。今回の旅ではこのホテルに2泊した。いいホテルだったがもうしばらくは泊まらないだろう。チェックアウトする。
さて、きょうは人生最後の新幹線の食堂車で食事する予定であるが、あと1箇所観光地に寄ることができそうだ。できれば周遊きっぷの三河湾・日本ラインゾーンで行ける場所がいい。
きのうは日本ラインと明治村に行った。今日は岐阜の金華山に行くことにしよう。ロープウェイが出ているようだ。ロープウェイの登り口までどうやって行くかが問題だが、たぶんゾーン券で行けるバス路線の途中に登り口があるのだろう。まずは東海道本線で岐阜まで行こう。
きのうみたいにホテルキャッスルナゴヤから近くの地下鉄の駅まで歩いても良かったのだが、きょうはなんとなくこのまま名古屋駅まで歩いていこうと思った。まずは歩く。
名古屋駅からそんなに遠くない場所のはずだが、お店も少なく住宅地のようだ。そんな場所をてくてく歩いていく。
なにしろ今の名古屋駅にはたかーいビルができているから間違えようがない。ビルに向けて歩いていく。ビルが見える場所なのに、全然都会っぽくない場所である。駅が近づいて、ようやく商店街っぽくなってくる。
そしてようやく名古屋駅に着いた。さあ、ゾーン券を自動改札に入れて通ろう。そして岐阜行きのホームに行く。そして新快速に乗る。今日もすわれないががんばっていこう。
おとといも通った線路を電車はすいすい進む。2月の名古屋は晴れている。そして尾張一宮を過ぎ、川を渡っていく。ムーンライトながらを岡崎で降りて米原行きに乗り換えるときはたいてい眠っている区間である。川を渡り、左に曲がっていく。
そして電車は無事岐阜駅に到着した。さてバス乗り場はどこだろう。
駅の北に出る。市電の通りが見えるが、右手にバスターミナルっぽい場所が見える。行ってみよう。
岐阜はいくつかバス会社があるようだが、この三河湾・日本ラインゾーンのゾーン券では乗れるバスが限られているのかもしれない。
そしてなんとなく、ロープウェイの入口まで行けて、ゾーン券で乗れそうなバスを見つけた。いざロープウェイ登り口まで行こうと、ぼくはバスに乗った。
名古屋から乗ってきた電車を岐阜で降り、北口を出る。さてバスターミナルはどこだろう。
右手にそれらしい広場がある。行ってみよう。
「金華山ロープウェー」のふもとの駅のそばに向かうらしいバスにはいくつかバス会社があり、ぼくが持っている「三河湾・日本ラインゾーン」の周遊きっぷでは乗れる会社と乗れない会社があるようだ。
広場をながめると、どうやらゾーン券で乗れるらしいバス会社のバスがあった。乗ってみよう。もし間違えても運賃を払えばいいやと思いながら待った。お客が10人程度乗り、バスが発車する。
道に出てしばらくは、ぼくが5年前に乗った、岐阜駅前から徹明町(てつめいちょう)を経由して忠節(ちゅうせつ)に向かう市電に沿った道を進んでいく。右にレールが見える。
徹明町の交差点に出る。忠節はいったんこの交差点を左に曲がる。右に進めば野一色(のいしき)の方向に進んでいく。しかしバスはレールのない方向に向けて直進していく。車通りが一気に少なくなっていく。
ぼくは降りるバス停を間違えないようにしようと思い、景色を注意して見ていた。お、右手にそれっぽい山が見える。上の方にお城っぽいものも見える。あれが金華山だろう。
しばらく北に進んだバスは右に曲がり、金華山の方向に進んでいく。そして山のふもとっぽい所にさしかかると、「次はロープウェー乗り場」という案内があった。降車ボタンを押す。
そして金華山ロープウェーの駅が見えるところでバスは停車した。ゾーン券を見せる。無事降りられた。
バスを降り、交差点を渡ると金華山ロープウェーの駅に出た。さて問題は、ゾーン券でそのまま乗れるか、それともきのう乗った日本ラインの船みたいにいったん窓口で乗車券をもらう必要があるかだ。
建物に入り、窓口があるのでゾーン券を係員に見せてみた。そうしたら、
係員「どうぞ。」
と言われた。ロープウェイはこのままでいいようだ。
ロープウェイに乗る。何人かは同じバスに乗った人たちだが、そうでない人たちもいる。車で来た人たちのようだ。やがて発車時刻になった。ゴンドラが動き出す。
駅を出た。いつ乗っても思うが、ロープウェイはながめがいい。まして周遊きっぷで乗り放題だからとてもお得である。
進む方向と反対方向を見れば、岐阜の街が眼下に見える。いい場所である。
そして山。緑の多い山である。岐阜の平野のまんなかにぽっかりと山があるのだ。そして山の上にお城である。お城は平野にある城も多いが、山の上の城もなかなかながめがよくて良さそうである。そんなふうにしてゴンドラはのぼっていく。そして頂上の駅に到着である。ゴンドラを降り、駅を出た。
駅を出てもすぐにお城があるわけではない。しばらく歩く。なぜかお城に向かう通路の横にはいろいろな動物たちが網のかこいに入っているのが見えた。ミニ動物園らしい。こんな山の上だからこれでいいのだろう。
アップダウンの曲がりくねった道を進み、なんとかお城まで来た。でもあまり大きくない城だ。たぶん弘前とかにある城と同じで、再建された城なのだろう。入ってみよう。
やっぱりというか、あまり古くない建物である。中は織田信長などのゆかりのものが展示されている。
さすがにお城なので3階だてくらいにはなっているが、1階1階がせまいのでたいしたものが置いていないのである。まあ山の上なのでながめは良い。ロープウェイに乗っても景色をながめるくらいしかすることがない場所もたくさんあるので、それに比べればお城がある分だけましなのだろう。
さあ、もう降りよう。また歩き、動物たちをながめてロープウェイ乗り場に行く。帰りもゾーン券を見せて乗る。そして出発。岐阜の街の建物を眼下に見ておりていく。だんだん景色が平野の景色になり、ふもとの駅に到着。ロープウェイをおりた。
帰りもバスである。行きに降りたバス停の向かい側に進む。あれ?帰りのバス停はどこだ?
よくよく考えたらこの道は岐阜駅から離れる方向への一方通行だった。近くに岐阜方向の一方通行の道があるはずだ。どこだ?
ロープウェイ駅に向かって戻り、曲がり角を右に曲がるとバス停があった。確認する。うん、岐阜駅行きや新岐阜駅行きが出ている。ここで待とう。
やってきた。新岐阜駅行きだ。ほかの客たちと一緒に乗る。そして細い道を進んでいく。
しばらく一方通行の細い道を進んだが、そのうち道が広くなり、両側通行になる。さらに進むと市電通りになった。あとはちょっと進んで終点新岐阜に到着である。ゾーン券を見せて降りる。
よし、まだまだ正午までは時間がある。今から名古屋に向かえば12時台の食堂車のあるひかりに乗れるだろう。
もう何度も通った新岐阜からJRの岐阜までの道を進み、無事岐阜駅までやってきた。さあ、この旅最後の、一番大事な目的に向けて名古屋に向かおう。
金華山ロープウェー登り口から乗ってきたバスを新岐阜駅前で降りて、てくてくJR岐阜まで歩いた。いちおう岐阜の市街地ではあるのだが、なんとなくさびれている。新岐阜のちょっと北とか、駅から離れた場所の方が活気があるようだ。なんとか岐阜駅に到着した。
きょうは新幹線の食堂車で食事をすることにしているので食事は必要ない。電車が遅れたら大変なのでただちに名古屋に向かおう。ぼくは三河湾・日本ラインのゾーン券で自動改札を通り、エスカレーターをのぼってホームに着いた。
新快速がやってきた。3連休の最後の日である。今日も名古屋近郊の電車は混雑していてすわれない。新快速は発車する。そして川を渡って愛知県に入る。やっぱり乗り放題のきっぷはいいなあ。
名古屋が近づき、おととい登ったタワーが見えてくる。このタワーがある限り、名古屋駅に行きたい人が道を間違う心配はない。これでいいのだろう。
そして新快速は名古屋に到着した。電車を降りる。まだまだ食堂車がついたひかりが出るまでは時間があるが、ただちに新幹線ホームに向かおう。
そう言えば、このゾーン券は自動改札対応のようだが、新幹線の自動改札は通れるだろうか?
おととし京阪神ゾーンの帰り券を使った時はかえり券と特急券を重ねて通すことができた。しかし今回のかえり券は「豊橋→東京都区内」なのでかえり券だけ通すわけにもいかない。
ためしにゾーン券だけ通してみたらはじかれたようだ。やっぱり有人改札に行こう。
有人改札に、ゾーン券、かえり券、「名古屋→東京」の自由席特急券を見せて無事中間改札を通った。さあ、ホームに行こう。
名古屋駅の有人の中間改札を通って新幹線の東京行きホームに出た。さあ、もうすぐ人生最後の新幹線の食堂車体験だ。
何本かひかりやのそみが通り過ぎ、ようやくおめあての食堂車のついたひかりがやってきた。まずは乗る。
東京に近づくと営業が終わってしまうので、ただちに食堂車に向かう。去年の2月にも行っているので間違えずに行けた。
やっぱりと言うか、お客は3〜4人ほどいる。最後の記念に食べていく人がたくさんいるようだ。
給仕「何になさいますか?」
「ハンバーグ定食ください。」
注文して待つと、三河安城を過ぎたあたりでハンバーグ定食がやってきた。このあたりは景色が良い。
ゆっくりと景色を見ながら最後の新幹線の食堂車の食事を食べる。去年もうまかったが今年もうまかった。
あとからあとからお客が来ることはわかっているので、もうそろそろ席を立たないといけない。なごりおしい気持ちで食堂車を去った。あっけない幕切れである。
さて、今日は指定席を取っていない。ためしに自由席に行ってみた。やっぱり満席である。デッキで過ごそう。
景色をぼーっとながめた。晴れているのでいい景色である。名古屋を12時に出たのでアパートには早い時間に帰れるだろう。あしたは会社だからちょっとでも休んでおこうと考えているうちに新丹那トンネルを抜け、熱海から小田原にかけての海が見えてくる。
そして新横浜を過ぎて品川のあたりを過ぎ、有楽町が見えて東京到着である。
これで食堂車がついているのは北斗星やトワイライトエクスプレスみたいな寝台特急だけになり、貴重になるな、などと思いながらひかりを降り、エスカレーターをおりて中間改札を抜けた。また来月は青春18きっぷの旅が待っているが、今月末には徹夜で仕事をしなければならないのでがんばろうと思った。