南千歳駅の待合いスペースのいすでダウンタウンDXを見て過ごした。
ダウンタウンDXの番組も終わり、しばらく時間が過ぎるとようやく夜行の釧路行きおおぞらの改札時刻となり、改札に北海道フリーきっぷと指定席券を見せ、階段をおりてホームに出た。そして自分の乗る車両が来る位置で待った。
やがておおぞらがやってきた。乗って通路側の席にすわった。そして発車である。
おおぞらは暗い中を進んだ。
しばらくするとスピードを落とし、シェルターのような場所をくぐった。そしてシェルターのない場所で停車である。停車してちょっと待つと貨物列車らしい列車がすれちがっていく。
また、発車し、シェルターのような場所をくぐってまた出てスピードを上げていく。
そしてまたしばらくするとスピードを落とし、シェルターのような場所をくぐり、シェルターのない場所で停車し、ちょっと待つと貨物列車らしい列車がすれちがっていき、また発車し、シェルターのような場所をくぐって進んでいく。それを3回、4回と繰り返す。
そう言えば石勝線にはとても信号所が多いということを何かの本で読んだことがある。
おそらく2つのシェルターにはさまれた場所が信号所なのだろう。
そして、シェルターで囲まれた場所にはポイントがあって、単線が複線に分岐したり、また単線に戻ったりしているのだ。
おそらく雪が降った時に、ポイントが寒さで凍結しないようにシェルターがあるのだろう。
なぜか停車している列車はふきさらしで待つのだろう。それだけポイントが大事ということらしい。
そんな風景を、おもしろいなあと思いながら見ていたが、やっぱりさすがに眠くなり、ぼくは眠りに落ちていった。
目が覚めた。
時刻はおおぞらが釧路に着く30分前であった。空は少しだけ明るくなっており、右手には太平洋が見えた。
車内は若い男がたくさんおり、若干若い女もいた。今日から3連休なので道東に旅行に来たのであろう。おそらくぼくと同じように根室行きのディーゼル車に乗り換えて納沙布岬(のさっぷみさき)をめざす人もいるだろうし、網走行きに乗り換える人も多いだろう。
みんな起きだし、荷物をまとめはじめているようだった。ぼくは特に何もすることがないのでそのまま景色をながめていた。
そしておおぞらは釧路の市街地に入っていき、そのまま釧路駅にすべりこんでいった。到着。
ぼくは根室行きディーゼル車に乗り換えるためおおぞらを降りた。どうやらいったん階段をおりて昇る必要があるようだ。
階段をおりて進むと改札があった。釧路に来るのは15年ぶりだが、どうやら昔無かった自動改札が釧路駅にはできているようだった。なかなか時代は進歩しているらしい。
改札を横目に見て階段を昇ると根室行きディーゼル車があった。乗ってすわる。けっこうおおぞらから乗り換える人が多いようだ。一部は納沙布岬までいっしょだろう。ぼくはそのままディーゼル車の発車を待った。
こうして逃亡3日目も無事に始まったのである。
根室行きのディーゼル車は、ゆっくりと釧路駅を発車していった。
じきにディーゼル車は市街地を離れていく。
しばらくは多少深い森が続く。
しかし、そのうちに木々の高さが低くなってきた。
どうやら根室半島に入ったらしい。半島に入ると、それほど高い木はなく、低い木々がずっと続くのだろう。
木々がとぎれると牛が見えた。根室本線は牛のいる場所も通り過ぎていくのであろう。
根室が近づくと、住宅街に入った。小高い山の頂上までずっと家が続いているらしい。
東に進んできた根室本線は、北に曲がり、西にまわりこんだ。そして終点、根室に到着した。
ディーゼル車を降り、北海道フリーきっぷを見せて改札を出ると、ぼくは納沙布岬(のさっぷみさき)行きのバスのターミナルを探した。すぐに見つかったが、もしかしたら納沙布岬まで往復の割引きっぷでもあるかもしれないと思い、ターミナルの営業所に入っていった。
予想通り、1割引の往復きっぷが売っていたので、並んで自分の順番を待ち、きっぷを買った。
実は去年、えりも岬に行ったことがあるのだが、日高本線の様似(さまに)駅でえりも岬までの割引きっぷがあることを知らず、様似駅に戻ってきてはじめて1000円もお得な割引きっぷがあることを知り、大損したなあと思ったことがあるので、納沙布岬でも同じようなことがないか確かめた、というわけである。
そんなこともあってきっぷを買い、営業所を出て外に停まっていた納沙布岬行きのバスに乗り、発車を待った。
後からぼくと同じディーゼル車に乗っていたらしい若者がやってきたが、運転手さんにきいて営業所に戻り、ぼくと同じ割引きっぷを買っていたようだった。そんなこんなで発車時刻になり、バスは納沙布岬に向けて発車した。
根室駅前を出発した納沙布岬(のさっぷみさき)行きバスは、しばらくの間は根室市街を何回か交差点で曲がりながら進んだ。地元の人がけっこう乗り降りしている。
きのう、おとといと違ってすっかり晴れ渡った青空の中、バスは進む。だんだんと郊外に向かっているようだ。
小学校らしい学校の前を通ると、あとは牧草地帯になった。小高い丘が続き、牛がいる。山は見えず、なだらかな景色を見ながらバスは進む。
そのままバスは進み、やがて終点、納沙布岬に到着である。けっこうここまで乗ってきたお客がいる。ほとんどの客はおおぞらからいっしょだった客だろう。
ここは宗谷岬やえりも岬と違って、そんなに大きな施設はないようである。
ただただ広い空き地が続いているだけであった。
とりあえず、海の見える場所にやってきた。
やっぱり、というか何というか、北方領土の話が書かれた石碑があった。
北方領土を日本の一部と考えるとここは日本の最東端ではないのである。
だから「日本の最東端」と書かれたものが少ないのである。
足もとには全国各地の地名の入った石が並んでいた。何のためのものかわからないが、まあこういう岬には変わったものがたくさんあるということなのだろう。
もう少し海を見てみた。なにしろぼくは仕事から逃げ出してここに来ているのだ。
海を見るとぼくは、ここで陸地は終わりなんだなあなどと思うことがある。
もちろんパスポートとか取れば外国に行けるのだろうけど、それでも海を見ると「自分の行ける場所は制限されている」ということを痛切に感じる。
逃げて逃げて、それでも逃げ切れない自分を感じるのだ。そんなことを思いながら時を過ごす。
ちょっと右の方に歩いてみた。ほんの少し、みやげもの屋がある場所がある。朝早いからまだ営業していないみたいだ。
さらに歩くと、ずっと向こうに小さな小さな灯台があった。行ってみようかとも思ったが、時間もないしやめておくことにした。
あとで知ったことだが、この日だけ灯台は開放されていて中に入れるが、その他の日は入れないという話を聞いた。でも行ってもたいしたことはないだろうし、まあいいかと思った。
さて、バスの発車時刻が近づいてきた。ぼくは歩いて、さっき降りたバスを見つけて乗った。
もちろん根室で往復買っているからきっぷの復路分で帰ることができる。
行きに乗ってきたお客が続々乗ってくるとドアが閉まり、発車である。
行きと同じく牧草地帯を走り、市街地に入っていった。
そして根室駅前に到着である。
さあ、また釧路に戻ろうとぼくは北海道フリーきっぷを取り出し、根室駅に入っていった。
根室駅の改札前でちょっと待つとすぐに釧路行き列車の改札時刻となり、ぼくは北海道フリーきっぷを見せて改札に入り、停車していたディーゼル車に乗った。
釧路〜根室間の列車は約2時間おきであるが、それほどお客は多いというわけでもない。
乗ってすわって待つと発車である。
行きに見た根室の家並みを見るとじきに牧草地帯になった。
このへんでぼくは眠くなり、うとうとした。やっぱり夜行明けは疲れるのである。
目が覚めるともう半島部分は終わり、多少高めの木々が続く景色となっていた。
そして東釧路である。あれ、目の前にダイエーがある。
こんな場所にあるんじゃ不便かなあとも思ったが、意外と車の便は良さそうで、この位置でもいいのかなと思う。
そのままディーゼル車は進み、釧路着である。
さて、今日はうろ覚えの知識をもとに釧路市街を散歩する予定である。
なんでも釧路の南の方に「春採湖(はるとりこ)」という湖があるらしい。そのそばにそば屋があるらしいのである。
とは言え湖と言ってもけっこう広そうなので、おそらくそば屋は見つからない可能性が高い、それでも次の網走行きのディーゼル車までは3時間以上あるので散歩しよう、という計画なのである。
そんなわけで改札を出ていったん北海道フリーきっぷをしまって、南に歩き出した。
市街地をずんずん南に進んでいくと橋が見えた。橋を渡る。
橋を渡ると小高い山が見え、山のふちに沿って右に進む道と左に進む道があった。
ぼくはまずは左に進むことにした。小高い山の南に春採湖があるらしいが、直接南に続く道が見つからなかったからだ。
しばらく進むと右に折れる道があった。脇道もある。おそらくなんとか脇道を進めば春採湖に行けるんじゃないかと思った。ぼくはその上り坂の脇道を進んでいく。
登って登って、なんとかここから先は下り坂、という場所までやってきた。
さらに進む。道をくだっていく。
湖が見えてきた。
けっこうきれいな湖である。しかし、あたりにお店らしいものは見あたらない。
やっぱりいきあたりばったりの旅は予定通りにはいかないものである。ひとまずそば屋はあきらめることにしよう。
ぼくは湖のまわりを右の方に歩いた。おそらくしばらく歩けばバス通りに着くだろうから、そこからバスに乗って釧路駅に行けばいいだろうと思った。
湖のそばの住宅街を歩いて進む。あまり車も来ない場所である。さらに進む。春採湖から離れていく。
ようやく車通りの多い場所にやってきた。しかしほとんど商店らしいものもない。工場のような場所があるくらいである。
バス停を探す。あったあった。ぼくは釧路行きらしい方向の停留所に行き、釧路駅行きバスを待つことにした。
釧路の南の春採湖(はるとりこ)の西の釧路行きバスの停留所でバスを待っているとおばさんがやってきた。
「あたしここのバスに乗るのはじめてなんだけど、ちゃんと来るんだろうね?」
「すいません、ぼくもはじめてなんです。」
「そうかね。」
そんな会話をしながら時間を過ごす。そしてやっとバスがやってきた。
お客は10人ほどである。バスに乗ると釧路駅までは速い。春採湖の北の山の西を迂回して進む。行きに渡った橋を渡り、高いビルの市街地を進むとたちまち釧路駅である。おとといの福井でバスに乗った時間より短かった。
さて、昼食がまだなので食べる必要がある。
お金を払ってバスを降りて駅前の道路の南をちょっとだけ西に進んでみるとラーメン屋を見つけた。そこでみそラーメンを食べることにする。
注文して待つと別のお客が入ってきた。もう午後3時近く、昼食には遅い時刻であるが、さすがに北海道はラーメン王国である。繁盛しているのであろう。ラーメンがやってきた。
きのうの「うにいくらほたて丼」もいいが、ラーメンもいい。すっかり満足して店を出るともうすぐ網走行きのディーゼル車の発車時刻である。
駅に戻り、改札を待つ。ようやく改札だ。北海道フリーきっぷを見せて改札に入り、ディーゼル車に乗った。
釧路から網走まで行く列車は数時間ぶりのはずなのに、お客はけっこう少ない。何両か連結しているはずなのに1人で1ボックス占領してしまう。
やっぱり11月は旅行シーズンではないので、たとえ3連休でもお客は少ないのであろう。
そのまま発車時刻になり、網走行きは発車した。
しばらくは根室行きと同じレールを走る。東釧路に着く。ダイエーが見えた。
そこから先は市街地を離れていく。枯れた草原に出た。11月は北海道にとってはもうじき雪の季節なのである。
そんな草原の風景をいつまでも見ていたかったが、日は短く、あっと言う間に暮れてしまい、たちまちまっくらになってしまった。
そしてディーゼル車は摩周に着いた。お客が何人か降りていく。
そのままディーゼル車が進み、川湯温泉に着いてもほとんどお客が乗ってこない。本当にオフシーズンなんだなと思う。
川湯温泉を過ぎると峠越えだが、暗闇なのでなんということもない。
斜里(しゃり)を過ぎてもお客はほとんど乗って来ない。右に海が見えるはずだが暗くて見えない。
そのままディーゼル車は網走に着いた。さあ、ひさしぶりにホテルで寝る。まずはディーゼル車を降りることにした。
網走駅で、釧路から乗ってきたディーゼル車を降りると改札に向かい、北海道フリーきっぷを見せて外に出た。
さて、ちょっとすることがある。あしたの予定だが、再び釧路に戻り、きのうと似たような感じで夜行の札幌行きおおぞらに乗る予定なのだ。
だから北海道フリーきっぷで指定席を取っておこうと考えた。網走駅のきっぷ売場に行き、あしたのおおぞらの指定席を調べてもらった。運良くちゃんとあったので指定席券を発行してもらった。
これでよし。ホテルに行こう。夕食はもしコンビニでもあれば買ってホテルで食べたいが、確か6年前に網走に来た時はこのあたりにコンビニなんかなかったよなあ。
と思ったら駅の外にローソンがあった。釧路でもそうだったが、数年の間にぼくが旅行した場所は確実に変化しているのだ。とりあえずローソンで夕食を買っていこう。
ローソンに入って案内を見たら、なんとここでは「博物館網走監獄」の入場券が1割引で売っていた。ロッピーで操作すると買えるらしい。
ぼくは福井のローソンでホテルを照会した時と同様にピコピコとタッチパネルを操作し、出てきた券をレジに持っていき、博物館網走監獄の入場券を売ってもらった。なかなか便利な時代になったものである。
あとは食べ物飲み物である。牛乳を買おうと思ったが、ちょっと前に工場のパイプの雑菌が牛乳に入ってしまったメーカーである○印の牛乳ばかりで、他の地元メーカーの牛乳は1リットルパックだけだ。よし、まだ○印の罪は残っている。ぼくは地元メーカーの牛乳を買い、1リットルではなにかと不便なので移し替え用に500mlペットボトルの飲み物を2本買った。そして夕食、あしたの朝食も買っていく。
準備もすっかり終わったのでローソンを出てホテルに向けて歩き始めた。
しばらく歩くと函館で予約しておいたホテルに着いた。チェックインし、部屋に行く。
まずは洗濯だ。この時点ではいつまで旅行するか決めていなかったので、ホテルの風呂で洗濯していく。下着とシャツをお湯に浸し、せっけんを入れてジャブジャブ洗い、すすいだ。
そして風呂場に引っかけておく。ホテルは乾燥しているから、あしたまでには乾くだろう。
そして何日ぶりかの風呂に入る。しっかり洗っておこう。
そして夕食。しっかりと食べておく。
テレビでも見たいが、なにしろ2日続けて夜行列車だったので疲れている。テレビを見る気にもなれず、ぼくはそのまま眠ってしまった。このようにして逃走3日目は終わったのである。
(注意:「網走刑務所」とは実際に犯罪を犯した者が服役している場所なので観光客にそんな場所を見せることはできない。観光客が、数十年前の網走刑務所の雰囲気を味わえる場所が網走刑務所とは別に建てられており、その観光地を「博物館網走監獄」と呼ぶ。)